薬物依存症の日々 (文春文庫) [Kindle]

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  • 2016年2月2日、元野球選手の清原和博氏は覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕、同5月31日に有罪判決が確定しました。その4年後、執行猶予が明けてから覚せい剤の禁断症状と戦い続けている清原氏の独白をまとめたノンフィクションです。
    プロ野球選手を引退し、長男、次男の二人の野球指導など穏やかな日々を送っていた清原氏ですが、勝負を賭けた野球やホームランを打った時の歓声などが”失われた”日常に、次第に”心に穴があいたような”心境となり、やがてその隙間をアルコールで、そして薬物で埋めるようになったとの事。
    「ほんの少しだけ。今だけ。いつでもやめられる」と思っていた薬物に、いつの間にか絡めとられて抜け出せなくなり、やがて家族も、親友も失う事になりました。本書は薬物を実際に使った清原氏が、薬物にはまり込んでゆく課程を冷静に描いています。
    薬物依存症から立ち直るきっかけを清原氏に与えてくれたのが、1985年夏の甲子園・決勝の宇部商業戦で2本のホームランを打った時に使っていたバットだったというのは印象的です。PL学園で取り組んだ野球の集大成ともいえる試合で使ったバットを目にして、それまで回復に向けて気持ちのきっかけさえつかめなかった清原氏が心を動かされる様子を読んで、いかに”あの試合”が(プロ野球で数々の華々しい舞台を経験されてはいても)清原氏にとって大きな存在であったのか、改めて気づかされました。
    薬物による事件が一般の大学生などにまで及んでいる今、薬物使用による地獄の様な日々を赤裸々に描いている本書を、是非多くの人に手に取ってもらいたいと感じました。
    本書巻末に薬物依存症治療の専門家による「あとがき」が掲載されています。多くの薬物依存症の患者さんと向き合ってきた専門家によると、薬物に走る人は「快感」を求めるのではなく、「苦痛」を緩和し、「不幸」に適応するために使い始める、との事でした。
    薬物を使用することは違法行為ですから、それを容認しようとは思いません。しかし、有名人が違法薬物を使用して逮捕された時、お決まりのように警察署の前で多くのカメラの砲列に晒され、頭を下げるシーンは、この専門家曰く「現代版の市中引き回しの刑」と表現されています。このような報道が、著名人でない薬物依存症の人にとっても、より大きなショックを与え、回復プログラムの支障になっているとの事です。
    薬物依存症の恐ろしさや、誰もが薬物依存になり得る可能性がある事、報道の在り方など、示唆に富む内容の1冊でした。

  • 【五年ぶりに会った長男は「大丈夫だよ」と笑ってくれた】覚醒剤取締法違反による衝撃の逮捕から七年。清原は想像を絶する苦痛の中でもがき続けてきた。最後に支えてくれたものについて語る。

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