日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか~増補改訂版『日本“式”経営の逆襲』~ (光文社新書) [Kindle]

著者 :
  • 光文社
3.82
  • (4)
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (306ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書で著者が書いていることは、日本は優れた経営技術を持っているが、それを普遍的なコンセプトへと昇華させることができていない(その原因は、理路整然と語らずとも通じ合える島国日本の特殊な環境にある)。一方米国のコンサルは日本企業から貪欲に学んだ経営技術をコンセプト化・パッケージ化してグローバルに大儲けしている。そして低迷する日本企業は日本初の経営技術を米国からわざわざ(日本企業の良さを削いでしまうような形で)逆輸入し、かえって競争力を失う結果となっている。経営者は日本の経営技術を再評価し、学者は日本の経営技術をコンセプト化して学問をリードし、日本のコンサルは日本発の経営技術でグローバルに稼げ、といったところか。

    確かに米国のコンサルは儲けすぎだよな。コンサルって経営に本当に役に立っているんだろうか? 中身は薄くて、要は孤独な経営者の背中を押すだけの虚業であんな法外な料金取るってまるで詐欺じゃないか、とついつい腹立たしく感じてしまうが、まあそれはいいか(笑)。

    あと、何でもかんでも欧米流を真似したい、という日本人の盲目的な欧米信仰、払拭すべきだよな。この点、著者に強く賛同する。

    本書、同じことが繰り返し繰り返し述べられているので、とても分かりやすいけどくどい感じがした。著者が学者の先頭に立って日本の経営技術のコンセプト化に奮闘している、というアピールも随所に…。

  • 「DX」という言葉の流行の中で、「日本企業の経営は遅れていて欧米の先進的な経営手法にキャッチアップしないといけない」という自虐的印象を漠然と抱いていた。
    本書はそんな日本企業の経営を全否定する風潮に反して、経営学的観点における日本がこれまで陥ってきた失敗と今後の可能性を冷静に腑分けしていく。

    ・文脈依存的な経営技術をコンセプト化して発信するところに日本の弱点があった
    ・一方で、日本の経営技術そのものが劣っているということは無く、たとえば「カイゼン」など日本発の経営技術が海外でコンセプト化され世界中に広まった事例もある
    ・これまでは、日本企業が自社の経営技術の強みを理解せずに、「海外で抽象化・論理モデル化された日本発の経営技術」を闇雲に逆輸入するといった状況すらあった
    ・たとえばグローバル市場における「カイゼン」のコンセプト化にもまだ課題があり、日本が発信したコンセプトや学問領域が世界市場で逆転できる可能性もまだある

    特に筆者が「経営教育の普及による価値創造の民主化」によって本気で社会を変えようとしており、とても共感した。

  • 面白かった。日本企業の強みの源泉を特定し、それは今の欧米企業の学びとなっていることを示す。その上で、文化的な背景を鑑みずに買っている企業のシステムの輸入することの危険性、下地となっている強みの源泉を見直すことを提言する。経営学的な観点からは海外の企業がどのように日本企業の強みを見出し、仕組み化して導入していったか、そのコンセプト化の部分で日本が上手くなかったことなど面白い観点が学べた。過度な賛美、過去礼賛がなく、非常にいい本だった。

  • ふだんこの手の経営本をまったく読まないのだが、片岡剛士氏がSNS上で絶賛していたので手に取ったのだが、読んで大正解だった。

    「経営技術をコンセプト化しないことが日本の弱み」、「資源とアイデアの出会いがイノベーションを産む」などの論点は、ふだん自分がリサーチしている企業などをみても、とても納得感がある。

    全編を通じて、経営学者としての「実践」が強く意識されている。「経営学とは何か」についての記述も多く、この分野に疎い自分にとっては理解の助けになったし、著者の情熱も伝わってきた。おすすめ。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

明治学院大学専任講師

「2019年 『イノベーションを生む“改善”』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩尾俊兵の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リチャード P....
マシュー・サイド
リンダ グラット...
佐々木 圭一
ジェームス W....
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×