日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか~増補改訂版『日本“式”経営の逆襲』~ (光文社新書) [Kindle]
- 光文社 (2023年10月18日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (306ページ)
感想・レビュー・書評
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「DX」という言葉の流行の中で、「日本企業の経営は遅れていて欧米の先進的な経営手法にキャッチアップしないといけない」という自虐的印象を漠然と抱いていた。
本書はそんな日本企業の経営を全否定する風潮に反して、経営学的観点における日本がこれまで陥ってきた失敗と今後の可能性を冷静に腑分けしていく。
・文脈依存的な経営技術をコンセプト化して発信するところに日本の弱点があった
・一方で、日本の経営技術そのものが劣っているということは無く、たとえば「カイゼン」など日本発の経営技術が海外でコンセプト化され世界中に広まった事例もある
・これまでは、日本企業が自社の経営技術の強みを理解せずに、「海外で抽象化・論理モデル化された日本発の経営技術」を闇雲に逆輸入するといった状況すらあった
・たとえばグローバル市場における「カイゼン」のコンセプト化にもまだ課題があり、日本が発信したコンセプトや学問領域が世界市場で逆転できる可能性もまだある
特に筆者が「経営教育の普及による価値創造の民主化」によって本気で社会を変えようとしており、とても共感した。 -
面白かった。日本企業の強みの源泉を特定し、それは今の欧米企業の学びとなっていることを示す。その上で、文化的な背景を鑑みずに買っている企業のシステムの輸入することの危険性、下地となっている強みの源泉を見直すことを提言する。経営学的な観点からは海外の企業がどのように日本企業の強みを見出し、仕組み化して導入していったか、そのコンセプト化の部分で日本が上手くなかったことなど面白い観点が学べた。過度な賛美、過去礼賛がなく、非常にいい本だった。
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ふだんこの手の経営本をまったく読まないのだが、片岡剛士氏がSNS上で絶賛していたので手に取ったのだが、読んで大正解だった。
「経営技術をコンセプト化しないことが日本の弱み」、「資源とアイデアの出会いがイノベーションを産む」などの論点は、ふだん自分がリサーチしている企業などをみても、とても納得感がある。
全編を通じて、経営学者としての「実践」が強く意識されている。「経営学とは何か」についての記述も多く、この分野に疎い自分にとっては理解の助けになったし、著者の情熱も伝わってきた。おすすめ。