板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh (幻冬舎単行本) [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • 日本のゴッホを目指した男が、ゴッホにはならずに、世界の「ムナカタ」になった生涯を妻チヤの視点からの作品。

    描いた夢の物心両面を達成していくサクセスストーリーであり、夫婦の愛の物語でもあり、昭和の家族小説の趣もあり、戦争の禍々しさにも触れていて、作者のインタビューにもあるが、テオとゴッホのようなクリエイティブパートナーとしての関係も描かれている。

    「もしもの分かれ道に、あの人も私も最善の道を選んでいた…」という運(チヤが東京大空襲を一日違いで逃れたり)や棟方の(芸術家としての)内面に突如として巻き起こる嵐の描写など読み応え十分だった。

  • audibleで読了。
    今までで一番Audibleに向いていると思った。
    渡辺えりさんが朗読。東北訛りがすごく本に合っていてよかった。
    棟方志功さんの妻チヤの目線で書かれているのも良かった。

  • 最初の方は、側から見たら子供抱えて大変としか思えなかったけど、だんだんチヤの苦労が苦労としてではなく支える使命のように描かれていた。

    手紙で棟方の愛のことばが書かれてたことはなかったと言ってたけど、棟方の仕事や作品を守り支えることで自分の役割を担ってきていたチヤの気持ちが溢れてきて感動的。

  • audible 。大恋愛小説でした。チヤさん、しあわせだったでしょ。
    棟方志功のこともうんと好きになりました。
    渡辺えりさん、さすがでした。
    そういえば原田マハさんがテレビで8割はフィクションと話してましたけど。

  • 1924年、画家ゴッホへの憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。しかし、絵を教えてくれる師も、画材を買うお金もなく…。棟方と苦楽を共にし支えた妻・チヤの無尽の愛と激動の時代を描くアート小説。

    棟方志功については高名な版画家ということしか知らなかったけれど、ゴッホやピカソを魅力的に描いた原田マハの手にかかると、活き活きとした実像が伝わってくる。でも本作で印象深かったのは志功より奥さんのチヤの方だったかも。
    (B)

  •  もちろん棟方の才能はすごかったけど、ゴッホとの出会い、絵描き仲間との出会い、チヤさんとの出会い、支援してくれる人たちとの出会いがあったから素晴らしい作品を残してくれたのだろう。目が悪いのにも関わらずあんな圧倒的な作品を生み出したのは驚異的だ。日本が誇る芸術家だけど、子供のようなところもあってみんなに愛されていた人でもあった。一気に読んでしまった。
     

  •  それぞれの章が「チヤが~している」という言葉ではじまり、ここでのチヤは夫のために墨を擦ったり、食事を準備したり、家族のために何かをしていることがほとんどなのだけれど、チヤを起点にして描かれる生活の様子が夫の姿をしっかりと映しており、棟方志功という芸術家の姿がより生き生きと魅力的に感じられた。
     チヤは自分の人生を夫のために捧げていて、夫は自分の人生を版画のために捧げているという、「チヤ→夫→芸術」の矢印が見えそうなところを、夫はあれほど身を捧げた版画よりもなによりもチヤの無事を祈っていたという構図が、ラブストーリーとしてとても美しい。

  • 棟方志功の版画をすぐに見に行きたくなる。作品はもちろん、板木が見たい。信じることも才能だと思う。

  • なんで、こんなに惹きつけられるんだろう。
    なんで、本を捲る手がサクサク進むんだろう。

    いつも気がついたら、読み終わってる。
    原田さんが紡ぐ物語にもっと浸りたいのに。笑

    今も、棟方節の方言が、頭の中でコダマする。
    昔、テレビで見たことある、あの笑顔クシャクシャで、グイグイと堪らなく無防備な顔が、忘れられない。

    見た当初の強烈な棟方志功の飛び出してくる勢いがある印象そのものが、そこに書かれてあった。
    どうやって棟方志功が生まれ、どうやってムナカタシコウになっていったのか。

     日本のゴッホになると、あの人は最初、言いました。
     だけど結局、あの人は、ゴッホにならなかった。
     ゴッホを超えて、とうとう、世界の「ムナカタ」になったんです。

    素敵な奥様でした!

  • 憧れのゴッホを目指していたが、
    ゴッホにはならず世界の「ムナカタ」になった生涯を
    妻のヤチの視点から描いた物語。

    棟方志功という名前は耳にしたことがありますが、
    はっきりと何をした方かどうかは全然知らなかったので
    この作品で棟方の人生を知ることと同時に素晴らしいアートの世界を知って学ぶことが出来て良かったです。

    芸術家というと生まれながらに天才的に芸術性に優れている人が
    多いというイメージがありますが、棟方の場合は田舎の貧しい所から
    一生懸命に好きなゴッホを目指して地道に努力をして、
    命を削りながら自分の作品に打ち込んでいく生き方が印象的でした。
    志半ばで眼を悪くしてしまい憧れて目標にしていた絵画ではなく、
    版画の道になりましたが、それでも挫折することなく、
    むしろそれが天職でもあるかのように全身全霊で作品を生み出していく様子は鳥肌が立ちました。
    それを側で支えている妻のヤチの健気さや心の強さも素晴らしかったです。

    「棟方という太陽を、どこまでも追いかけていくひまわりなのだ。
     棟方が板上で咲かせた花々は数限りない。
     その中で、もっと力強く、美しく生き生きとした大輪の花。
     それこそが。チヤであった。」
    という一節が印象的でゴッホが好きな棟方とヤチにはぴったりだと思いました。
    大変な時代に生きた中でもこんな夫婦の形になっている所が
    素晴らしく良い夫婦だなと思いました。
    今の時代にこんな風に称え合える夫婦がいるかどうか・・・
    笑顔になりならが回想していくヤチの姿がこの作品から
    見えたように感じました。

    原田さんのアート作品は何冊も読んでいますが、
    今回は棟方自身よりも妻の愛情の深さと強さ、
    そして夫婦の愛情の物語といっても良いくらいに
    今までのアート作品とはまた違った良さを味わえました。

    棟方志功の作品は実際に一度も観たことがないので、
    何処かで観る機会があったら観てみたいと思いました。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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