冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]
- 東京創元社 (2024年4月26日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (398ページ)
感想・レビュー・書評
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2024/05/14
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小鳩常悟朗、高校三年生。小市民を志す彼はある日空を舞い--落ち、病院に搬送された。轢き逃げだった。病室で目を覚ました小鳩君は、朦朧としながら自分が右の足の骨を折っていることを聞かされ、それにより大学受験が困難になったことを知る。警察から聴取を受け、ふたたび昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた……。
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大学受験を前にひき逃げに遭い、浪人が確定してしまった小鳩くん。病室で目を覚ました彼の枕元には、小市民仲間であり、復讐を何よりも愛する小佐内さんからメッセージがあった。
"犯人をゆるさない"
先行公開されたあらすじから小佐内無双が来るかと思いきや、中学生時代の事件と現在のひき逃げ事件を絡めたストーリーとなっている。中学時代の事件を読めるとは思っていなかったのでこれは嬉しかった。
術後の治療やひき逃げ現場の様子、警察の事情聴取の風景など、細部まで取材されたのだなと思わせる丁寧な描写になっている。(ひょっとすると可燃物シリーズの取材成果かもしれないが)
また情報の収集手段も中学生として無理のない範囲(小佐内さんはまあ小佐内さんなのでそこはおいといて)で、そういうところも好ましい。推理小説で警察が一般人にぽろぽろ情報を漏らす展開がよくあるが、あれはどうかと思う。
伏線も巧妙で、相変わらずお見事としか言いようがない。
今回は割と早い段階で犯人はわかったが、犯人当てとはまた別口で『中学生時代の事件の真相』という関心事があったので途中で飽きることはなかった。
また犯人がわかった状態で読んでみると、さりげないミスディレクションの発見や犯人の描写ひとつにも気を遣っていることがわかり、唸らされた。
秋季限定から長い間待った方も、自分のように比較的最近読み始めた人間でも、はたまた小鳩くんと小佐内さんの関係がどう変化したか気になる方にも、十二分に満足できる一冊だろう。
このシリーズを、そして結末を読めて良かった。