地上 地に潜むもの [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想・レビュー・書評

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  • 小説家・島田清次郎の評伝は読みました。でも彼の作品は一つも読んだことがありません。では片手落ちもいいところなので、代表作である「地上」の第一部を読んでみた。

    さすがに当時ベストセラーになっただけあって読ませる。廓の描写も興味深い。

    話の途中で終わっていることは承知の上で読んだが、第二部はこの続きではないとのことなので、第二部を読みたいかと聞かれれば、「暇があれば読むだろうが進んで読みたいとは思わない」といった感じの答になってしまう。

  • 何だか[血上]ってタイトルの方がしっくりくるような壮絶な作品。大正の貧の苦しみが文字から滲み出てて吐き気までしてくる。勿論良い意味で。何より著者の人生の破壊力に絶句した。

  • 貧しき人々を救わんがため、事あるごとに偉くなろうと誓う少年、大河平一郎。美しい母に守り育てられ、親友の深井や恋人の和歌子との交流のうちに青春を謳歌していたが、貧しさの故に近い将来学費にも事欠くであろうと予想せられる為、母の友人である冬子の口利きにより、遊郭の一画に間借りすることになる。母の仕事の利便を図る為と、何しろ貧しいからということが理解できている平一郎ではあったが、遊郭に住むことにはかなりの抵抗があった。その春風楼には、様々な理由から色街に身を沈めねばならなかった女達がおり、本人の心構えや程度の差はありつつも皆等しく不幸かつ不憫。仕事での無理がたたって非常に凄惨な事件が起こるのだが、それは平一郎とは関係ない。遊郭に暮らしながらも清浄な心持は変わらないと自負する平一郎は、その心のまま深井や和歌子との友情や愛情を育み続ける。だが、ふとした偶然から和歌子に出した手紙を教師に読まれてしまい、謹慎処分になった上和歌子とも引き離されてしまう。その後和歌子は東京に嫁がされ、謹慎が解けた後も学業に身が入らなくなった平一郎は、深井の紹介で社会主義者的な学生の一団と交流を持つ。そんな中、天野という男に身請けされて東京で暮らしていた冬子は、春風楼に帰ってきた折、平一郎の母お光に、天野が書生を探しているので平一郎を紹介してはどうかと持ちかける。冬子は知らなかったが、お光と天野の間には、実家の北野家の衰亡の原因となった浅からぬ因縁があった。お光には綾子という双子の姉がおり、兄容一郎の友人の大河俊太郎は、綾子の恋人であった。将来的には俊太郎と綾子が結婚するものと誰もが思っていたが、ある時現れた天野一郎という男のために状況は一変する。兄が連れてきた天野を、何故か初対面から敵視していた綾子。そして天野が来た翌日、彼女は、天野に復讐しなくてはならない身になったとお光に打ち明ける。俊太郎をお光に託し、天野と共に姿を消す綾子。お光は姉の言うまま俊太郎と結婚するが、兄の容一郎はその翌年自殺する。彼の遺書には、近郷近在を支配していた北野家の全財産を大川村へ返すよう書かれてあり、斯くして北野家は滅亡したのであった。そのためお光は、自分の全ては悉く天野に奪われたと思っており、この上息子の平一郎までもと苦しむが、しかし学問を志す意志の尊さを思い、また天野を滅ぼすのは平一郎以外にないと、息子を東京へ遣る決心を固めるのだった。さて東京へ出てきた平一郎は、天野に対する冬子や自分の立場、母から言い含められたことや天野の息子の発言などについて思い悩みつつも、これからの人生への気持ちを新たにするのだった。

    と結構端折ったのに粗筋だけでこの長さ。これだと第一部は平一郎が、偉くなると誓う→なんか事件がある→誓う→なんかある→誓う←今ここ でいいんじゃないか。春風楼のくだりは迫力あったし恐ろしくてよかったが、本筋とはあまり関係ないし、おそらく今後出て来ないのだろう。基本的には恋愛小説と言ってもいいかもしれないが、キャラクター全員の性情が非常に激しい為、時々何言ってんだか分からなくなる。島田清次郎という人そのものみたいだ。と言うより露骨に自分がモデルだよな。第一部の平一郎は辛うじて中二病じゃないようだが、これから先エスカレートしていくのだろう。続きが読みたくもあるが、島清本人のエピソードと併せて読むともうお腹いっぱい。後半はアジ演説ばかりでしかも破綻してるらしいし、続刊が手に入らなくて良かったかも。

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