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感想・レビュー・書評
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ほんとうにこの石川啄木というひとは、歌を詠もうとして歌を書いたのではないというのが感じられる。どうも自分が考えるものというのが、歌にならざるをえないのだ。貧しかろうと、どんなに疎まれようと、おそらく彼は歌を詠み続けるのだと思う。
それだからこそ、誰よりも人一倍、ことばというものに対して驚きを持っている。彼には、そうとしか言いようのないものたちが彼に迫ってくるのだ。それを彼は眼を大きくして正面から立ち向かいたいのだ。ことば以前に立ち返ろうとする、リルケにも似たその姿勢。そんな情熱を前にしてしまうと、自分の吐き出すことばが、いかに死んだものであるか、
玩具にすぎないか、彼はそんなかなしみの中を生きている。それでも書かずにおれない、彼自身がもう歌になっている。
彼にとっては生きた歌以外に歌とは思われない。ちょうど、死体を生きたひとと思わぬように。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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