アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る [ブックライブ]

著者 :
  • 日経BP
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  • ブックライブ ・電子書籍
  • / ISBN・EAN: 9784296101627

感想・レビュー・書評

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  • 今後のビジネスの鍵となる用語としてよく使われるデジタルトランスフォーメーションにまつわる最先端のトレンドや思想を垣間見ることができる。

    非常に勉強になったし、大きく心を揺さぶられる内容でもあった。

    今後のビジネスが、いかに顧客接点を多く作り出し、その接点から情報を得て、顧客に還元していくか、ということが鍵になっていることが今更ながら個人的には目から鱗。アマゾンや世界的に有名な大手IT企業も同じ目線でビジネスを見据えていたから、情報取得を優先した価格戦略や事業戦略を進め、かつそのスピード感を重視しながら、ここまで来たんだろうなと。

    また、この手の話を日本で語ると常に個人情報の扱いやプライバシーの問題がついてまわるし、その危惧が(職業柄も相まって)議論の遡上に全面に出てくる。もちろん避けては通れない話ではあるけれど、一方で徹底したアフターデジタルの実現によって多くの機会創出と社会問題の解決に寄与していることも事実だ。本著で紹介される中国の事例で、本来、中国の人たちはお互いの信用を担保する仕組みや思想が余りないところを、デジタライゼーションを通じて、データ化、ポイント化する仕組みを入れたことで、社会全体のモラルが向上したといった帰結は、リスク(例え現行の法規制が障壁になり得ようとも)とベネフィットをとことん突き詰める必要がある局面に来ていることを強く実感した。しかも、日本では「気に食わないから考えない。それで良い」という訳にはいかない。グローバルの潮流がそういった方向に進もうとしている以上、その方向性に沿わなければ淘汰されていってしまう。

    もう1つ、本著のお陰で中国に対する見方が劇的に変わった。技術的な観点でも先端ビジネスにおける物の見方も、彼らは日本の遥か先を行っていると思ってしまった。先端技術とそれをビジネスに反映するビジョンと鋭い洞察力がある。他から謙虚に学ぶ姿勢があり、それを実際に実現する実行力とリーダーシップもある。「中国なのになぜ?」という先入観は一刻も早く捨てた方が良いと思った。

    一層の危機感とともに、ある意味、他から学ぶ大切さを思い出させてくれた本でもあった。


    以下、印象に残った点のメモ。

    ・「ジーマ・クレジットの点数600点以上の人から買う」という絞込みが可能に。ユーザ調査のヒアリングでもそういう人が珍しくない。
    (中国の固有事情?いずれにせよ、情報格差の是正と周囲に対する信頼担保の両方を右舷する画期的な術)
    ・中国では文化大革命の後、儒教的な文化や考え方が一度リセットされた。そうした状況で「善行を積むと評価してもらえる」。デジタルにより社会システムのアップデートがされた一例。
    ・ディディ(タクシー手配)は、良くも悪くも徹底的に性悪説で、放っておいたら何をするか分からないので「人は実利主義である」という認識のもと、マナー向上やサービス品質をデータで可視化し、ドライバーに課題を課す仕組みを作って解決した。

    ・「今の時代は、OMOともいわれるように、オンラインとオフラインとは既に溶け合って違いはなくなりつつあると考えるのが当たり前。顧客はチャネルで考えず、その時一番便利な方法を選びたいだけ」

    ・「なぜ企業側がそこまでデータを収集しなくてはいけないかというと、これからのビジネスはデータをできる限り集め、そのデータをフル活用し、プロダクトとUX(顧客体験、ユーザーエクスペリエンス)をいかに高速で改善できるかどうかが競争原理になるから」

    ・「好みは人それぞれであり、悩みやすい人そうでない人、Aが好きな人・Bが好きな人など、行動習慣は違う。そういった行動の持つ意味合いを読み取り、最適なタイミングで最適な情報提供ができて初めて意味がある。属性データだけではなく行動データも含め、購買習慣を全面的にデータ収集できるかどうか、これからのビジネスの鍵を握る」

    ・日本はモノやおもてなしの品質が高いという自負と現状があり、そうした現状のアセットを信頼しすぎてプロダクト志向から脱却できないケースがよく見られる。その結果、逆OMO型でDXに取り組もうとしがち。

    ・テンセントUX担当「私は日本を尊敬している。それは主に2つのから、1つめは、おゆざけとかお遊び、アニメやコスプレもそうだが、何か意味のないことに異常な情熱を傾け、ユニークな文化や発明をしてしまうこと。もう1つは温かさや絆。日本の文化や作品から感じられるような、人同士の間に自然にある温かさのようなものは、なかなか中国で生み出せるものではない。」

    ・「データをどのように使うのかが試され、一人一人からそういう目で見られている絵に意識している。だからこそ、都市設計や交通データに活用し、さらには植林活動など、得られたデータを社会貢献として還元する活動を行っている」

    ・便利かつ信頼できる企業・サービスなら、自分のデータを提供しても構わないと思うは、ふつう。逆にデータを提供したことでひたすら売りつけてくる会社に対してネガティブなイメージを持つのは当たり前。ネガティブなイメージを持つ会社やサービスとの接点は、どんどん接する頻度が低くなっていく。高頻度接点と高付加価値をもたらすアフターデジタルのサービスに淘汰されていく。

    ・サブスクリプションモデルの導入支援企業Zuoraの創設者、ティエン・ツォは、サブスクリプションの時代が到来し、あらゆる業界に適用されるようになる、と言い続けているが、彼のサブスクリプションは月額課金型ビジネスのことを指しているわけではなく、「LTV型のビジネスにして、顧客IDとそのリアルタイムの行動が分かるようにしないと、デジタル起点の時代では生き残れない」と言っている。寄り添い続け、顧客を知り続けるからこそ、その顧客に良い体験が提供できるという意味で同じ考えを共有する同志を捉えている。

    ・UXグロースハックとは、とにかく行動データを使ってエクスペリエンスを良いものにし、エクスペリエンスが良いのでは行動データが集まる、というループをとにかく高速で作る人たち・作る活動のこと。

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