2022.4.18.読了…なのだが、単語本が出た時に読んでいた…ことは覚えていたのに、設定全く間違って記憶していた。私の記憶では主人公由紀と敦子は、「死ぬ瞬間を見てみたい」と思って、一緒に行動していたのに実際は違った。
ということで、由紀と敦子は小学校1年生で通い始めた剣道教師で一緒になり、中学、高校と同じ学校で過ごした友達。由紀は小学校5年生の時に手の甲に大怪我をし、握力が3になってしまい剣道ができなくなってしまう。敦子はそのまま剣道を続け中学3年生には強豪校に推薦してもらえるまでになるが、大会の大将戦で捻挫をし、そのまま引退せざるを得なくなる。
同じ公立の女子高校に通いだした二人の前にある日、友人の自殺を目撃したという転校生紫織が現れる。紫織はその時の描写を半ば恍惚としながら二人に語る。なにか、死を見たことを自慢されたように由紀と敦子はそれぞれ感じ、やはりそれぞれの心の中で、死ぬ瞬間をてみたいという願望を持ってしまう。そして、死を見に、その年の夏休み由紀は病院へ、敦子は老人ホームへボランティアに赴く。二人は全く別行動のはずだったが、ある人物を通して二人は手繰り寄せられていく。
湊かなえさんらしく、伏線がいろいろなところに張り巡らされており、そして、後で知ったのだが、いろいろな仕掛けがあり、最後、それらが、どのように回収されていくのかが本当に楽しみで、これは以前読んだ時同様、また、あっという間に読み終えた。
湊かなえさんの本は最後の最後まで読まないとダメということを思い知らされるどんでん返しの連続でスリル満点!面白かった。その面白さに関して、現実離れしているとか人間関係がそう都合よくいくわけがないとか思ってしまうと一気に面白くなくなってしまう。
そこで今回のもう一つの収穫は文庫版の解説である。
解説のなかで「ごくまれに、こういう登場人物どうしの複雑なつながりをありえないと言って批判する人がいるのだけれど、それこそがフィクションの魅力なのだ、と小声で反論しておきたい」という文章に目からウロコの思いだった。そうなのだ、そう考えればいっぱい楽しめる作品があるのだ。ともすれば現実感がない…とか、こんなことありえない…とか言って作品を低評価してしまうがこのように考えれば、フィクションだからこそできるのだと考えれば、心から楽しめるのだ。
「現実感」という呪縛から離れなければならない!その視点を持った途端、偶然読み終わった日ある荒唐無稽なドラマを見ても楽しめたし、これからも、いろいろな作品を読んだり見たりした後楽しめるだろう。貴重な解説を読んだと思う。
小説の内容に☆四つ、そして解説にプラス☆一つ!で、☆五つにしたいと思った。
- 感想投稿日 : 2022年4月20日
- 読了日 : 2022年4月20日
- 本棚登録日 : 2022年4月20日
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