『ドリトル先生』でお馴染みのヒュー・ロフティングが描く中世を舞台にした物語。
始まりは屋根裏部屋。
9歳の双子ジャイルズとアンがベッドの上で階下の音から両親の会話を想像するシーン。
一気に二人と同じ目線になり、ワクワクと物語の中へ。
二人は父親がお金に困っていることを知り、魔女と呼ばれるアグネスを訪ねる。
アグネスにもらったのは、耳をあてると人の噂が聞こえるという魔法の「ささやき貝」
二人は、ささやき貝を賢く使い、一家はピンチを脱出。
しかし、ここから新しい物語が始まる。
第2部の主人公は若き騎士となった双子の兄ジャイルズ。
彼は王の「さがしもの係」として仕えながら、大好きな王の婚約者バーバラに恋をしてしまう。
果たして、彼が選んだ道とは・・・。
手に取った時と読み終えた時。
本の印象がガラリと変わった。
控えめなタイトルと素朴な挿絵の中に
ドラマティックで壮大な物語が。
ジャイルズと9年間共に冒険した気持ち。
アンと交わす冗談、
命を懸けて王の前へ飛び出した日、
名馬ミッドナイトが自分の馬になった瞬間、
バーバラへの恋心に気付いてしまった胸の高鳴りと絶望。
ミッドナイトと死に物狂いで駆けるラストシーン。
一つ一つのシーンが鮮やかに浮かんでくる。
描写や会話が美しく、真っすぐで、読んでいて心地よかった。
ロフティングのユーモアも楽しかった。
原題の「The Twilight of Magic」も雰囲気ぴったり。
ささやき貝が欲しいかと尋ねられた
庭師ジェフリーのセリフが好き。
「種から芽が出て花が咲く、これ以上の魔法がありますか?」
「わたしは、いそがしいんですよ、あなた。草地に寝っころがって、しだいに形をかえながら空を流れる雲を見るのに。だもんで、自分のうわさ話などきくひまはないんですよ。」
意地悪な人や卑しい人も登場するが、
庭師やルカや王、そしてジャイルズなど、賢く正しい人たちに何度も心動かされ、嬉しく楽しく読み進めた。
高学年から大人にもおすすめの一冊。
- 感想投稿日 : 2021年7月6日
- 読了日 : 2021年7月5日
- 本棚登録日 : 2021年7月5日
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