前巻の終盤、主人公梶が憲兵隊との衝突が原因で、召集令状が届いて終了した。中巻では、梶が軍隊に所属して、その後、戦場に赴いて本格的に戦闘するまでが大きな流れである。
前巻に続いて、組織としての軍隊の存在が記述されている。そこでは、組織間での上下関係の厳しさ、また異性に対する異常な執着、妄想など、良くも悪くも人間の内面が垣間見える。そこでの暮らしはただ理不尽で、合理的な判断が通用しない。そのような状況下で、梶は初めは特に変わった様子はなかったものの、物語が後半に進むにつれて、軍隊の論理に飲み込まれていき、かつての上司のように、威圧的な雰囲気に至るのは印象的である。
自分はまともだと思ってたつもりが、いつのまにか組織の価値観に染まっていき、組織の論理で物事を判断する様子は傍から見て恐ろしい。人間が集団に所属すると、一人でいるときよりも理性が正常に働かないことは、この物語に限らず、現代の日本の組織に当てはまるのではないだろうか。
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- 感想投稿日 : 2023年6月27日
- 読了日 : 2023年5月23日
- 本棚登録日 : 2023年5月23日
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