予想以上に面白く、一気読みしてしまった。20年以上加納さんの本を読んでいるが、彼女の著作の中でもお気に入り上位かもしれない。
閉校間近の女子大、卒業が危ういワケアリ女子学生を集めた、半年間の卒業合宿補習。女子達の抱える事情は実に様々だ。自らを落ちこぼれと思い込み、生きる気力すら失いかけているような彼女達が、心身のリハビリをしながら生きる意味を見出していく。
相変わらず加納さんの構成の巧さはお見事。起承「転」「結」で「ヒャッ!」と声が出そうになる、伏線の回収の鮮やかさよ!そして、傷付いた心にそっと寄り添うさり気ない優しさの絶妙な塩梅。一歩間違えると重苦しくなってしまう展開を、軽やかにするユーモアの塩梅。以前から加納さんの甘辛のバランスは好きだったけど、甘さにも辛さにも深みを感じるようになってきたな。自分自身も歳を重ねてきたから、20代前半の彼女達を、昔の自分を重ねるような気持ちで読むことができたからかもしれないが。
加納さんの、若い人たちに向けたメッセージが心に沁みる。これは是非とも老若男女たくさんの世代に読んで欲しい物語だなと思う。挫折知らずで人生歩んでいける人なんていない。だからこそ、それぞれの世代の過去や現在に共鳴する部分が、必ずあるんじゃないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の作家
- 感想投稿日 : 2019年5月8日
- 読了日 : 2019年5月8日
- 本棚登録日 : 2019年4月30日
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