ねないこはわたし

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年7月13日発売)
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本棚登録 : 544
感想 : 87
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せなけいこさんの絵本で育ち、せなけいこさんの絵本で子育てをした。久々に表紙のめがねうさぎとおばけを見て、懐かしさがこみ上げました。
「大人も楽しめる絵本」と銘打った本書は、優しい語り口とたくさんの原画で構成された自伝で、そういえばせなさんのことを何も知らなかったなと今更ながら気付く。母に反発して女子大に進まず武井武雄氏に弟子入りし、ご主人は落語家さんだったなんて。ユーモアたっぷりの、あの懐かしい「せなけいこ」節は健在だが、行間から滲み出る、絵本作家としての情熱。
「勇気だらけだった。だって他には何も持っていないもの。」
シンプルながら心にひっかかる文章。もし完全大人向けの自伝だったら、きっと濃くずっしりとした内容になっただろう。それもいいだろうけど、本作のように漢字にルビを振り、絵本の雰囲気を崩さず素朴な文で生い立ちを綴った本書だからこそ十二分に読みごたえがある。
ご主人が落語家ということで、落語が身近にあったおかげで絵本のアイディアが浮かんだとか。「落語の世界は、子どもの世界と案外近いのかもしれない」という一文には納得。他、お子さんとのエピソードなど、クスッと笑えるところもふんだんにあり、貴重な原画も含め、ファンにはたまらない。
また、せなさんの絵本を読み返したくなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・児童文学・YA
感想投稿日 : 2017年8月29日
読了日 : 2017年8月29日
本棚登録日 : 2017年8月17日

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