郊外につくられた、大規模な人工都市「若葉ニュータウン」。1971年から2021年まで…ニュータウンの変遷を、そこに住む人々の悲喜こもごもと絡めながら綴られる、十年毎の団地年代記。
高度経済成長期、バブル全盛期から不景気突入、震災、そして今。時代の移ろいと共に、ニュータウンの立ち位置も変わってゆく。連作短編という形式が、人々の歩みを語るのにピッタリだなと思った。どの時代も、どのエピソードも、懐かしく少しほろ苦い。よりよい暮らしを求め、時代の流れに翻弄され、上を見ては躓き。様々な世代の喜怒哀楽が、どこか自分の軌跡と重なるようだ。
そして、ニュータウンの歴史についても初めて知ることが多く、どれほどの人々が夢を抱いて新しい生活に飛び込んだんだろうと思うと、何だか感慨深かった。こんな風に伏線が回収されるのか!と、あの人この人の「その後」をさりげなく気付かせてくれるのも嬉しい。改めて…町は生き物なんだなと思える。その「町」を生かすのは人なんだと、これまた改めて強く思える一冊だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本の作家
- 感想投稿日 : 2021年3月18日
- 読了日 : 2021年3月18日
- 本棚登録日 : 2021年3月2日
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