むらさきのスカートの女 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2022年6月7日発売)
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本棚登録 : 1280
感想 : 195
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Kindle Unlimitedで読了。今村夏子さんの芥川賞受賞作です。
先日、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読み終えましたが、2作品ともとても読みやすい。サクサク読めました。私が昔読んだ芥川賞は、私が若かったこともあると思うけど、当時はおもしろいと感じることができませんでした。でもこの2作品は、両方ともおもしろく読めました。

今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』ですが、読んでいてなんだかデジャビュのようなものを感じていました。そうして思い出したのが、高橋留美子さんの『らんま1/2』で九能帯刀が女らんまを呼ぶときの『おさげの女』でした。女、女と連呼するところが、共通していたんですね。九能帯刀は相手の名前がわからないからこのように呼んでいました。
物語の語り手である「わたし」は、「むらさきのスカートの女」が「日野まゆ子」という名前だととうに知っているにもかかわらず、「むらさきのスカートの女」と物語の中で言い続けます。
終盤では
『わたしは静かに首を振り、権藤チーフではないよ、と言った。 「わたしは、黄色いカーディガンの女だよ」』
と、「むらさきのスカートの女」に言うのです。

この小説は、「わたし」という語り手が「むらさきのスカートの女」と友だちになりたくて、だけど実際に友だちになろうとするような行動は起こさずに、「むらさきのスカートの女」の私生活をひたすらつけ回すというお話です。さらに「むらさきのスカートの女」に良かれと思う行いを陰でしています。
最初は「むらさきのスカートの女」の描写が不気味に思えるのですが、だんだんと語り手の「わたし」が奇妙なもののように思えてきます。「むらさきのスカートの女」を自分の勤めるホテルに就職するようにし向け、「むらさきのスカートの女」を見守る?見張る?ために遅刻や無断欠勤までしています。「わたし」が語る「むらさきのスカートの女」の噂話や職場での様子、私生活の描写が延々と続くお話なのですが、最後まで飽きずに読めました。「わたし」は奇妙ですが、「むらさきのスカートの女」も、奇妙といえば奇妙です。ホテルの清掃スタッフとして就職すると、「髪はパサパサのボサボサ、爪は真っ黒のむらさきのスカートの女」がみるみるうちにきれいで健康的な女性に変貌し、最初は遠慮深い様子だったのが傍若無人になり、さらに所長と不倫までしてしまう。
奇妙な「2人」が、最終的にどのように関係を持つのか?
最後まで奇妙な余韻の続くお話でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 国内 女性作家
感想投稿日 : 2023年10月26日
読了日 : 2023年10月26日
本棚登録日 : 2023年10月26日

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