はてしない物語 上 (岩波少年文庫 501)

  • 岩波書店 (2000年6月16日発売)
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本棚登録 : 3329
感想 : 243
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言わずと知れた児童書の名著。
古書店で見かけたあかがね色に輝く本をどうしても読みたくなってしまった少年バスチアンは、店主に黙って思わず持ち帰ってしまう。
ほこりっぽい学校の倉庫に閉じこもって表紙を開くと、勇者アトレーユと幸いの竜フッフールに導かれ、彼自身も共にドキドキハラハラしながらめくるめく冒険の世界へと誘われてゆく。
虚無に脅かされるファンタージエン国の物語と、七枝燭台のろうそくの炎の灯りでそれを読み続けるバスチアンの現実とは、交互に切り替わり続けてやがて一つになりーー。

「本って閉じてあるとき、中で何が起こっているのだろうな?」
バスチアンと同じことを私も考えたことがある。
ページをめくればすぐそこに物語が広がっているから文字として読むことができる。
でも閉じてあるときには、いったいどうなっているのだろう?
その世界はどこに消えてしまうのだろう?

私は書棚に並ぶ背表紙を見るのが大好きなのだけれど、それってそこに澄ました表情でおしとやかに整列している本たちが、実はどれほど豊かな性格を秘めているかをすでに知っているからなんだと、考えていて気づいた。
閉じられているその一冊一冊のうちに広がっている世界を想像することができるから。
本を閉じているときでも想像力は失われない。だから世界は変わらずそこに存在していると確信できる。

その想像力を育ててくれたのはやはり、かつて少女だった私が読んでいた数々の本なのだろうね。
通学路で歩きながら没頭したハリー・ポッター。最終巻で呆然とさせられたダレン・シャン。親に隠れてこそこそ集めたガールズ・イン・ラブ。この本は私たち子どもの味方だ!と初めて思わせてくれたチャーリーとチョコレート工場。
知らない世界へ連れて行ってくれたたくさんの物語が、ぶわっと思い出される。
私自身も「はてしない物語」を読みながら、バスチアンが読む「はてしない物語」で感じていることそのままを追体験するような、それはとても不思議な感覚だった。
終わりなき終わり。読みながら生まれる、はてしない物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2021年2月13日
読了日 : 2021年2月5日
本棚登録日 : 2021年2月5日

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