ぜつぼう

著者 :
  • 講談社 (2006年4月28日発売)
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本棚登録 : 591
感想 : 103
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一発屋芸人のその後を描いたような小説。
都会を歩けばどこでも見知らぬ他人からひそひそ「終わった」と囁かれる。
深い絶望から不眠症になった戸越は、ひょんなことからとあるホームレスの実家に居候し、憎きディレクターへ復讐の時を告げる伝書鳩を待つこととなった。
しかしたどり着いた家では、すでに勝手に暮らしている不思議な女シズミがいて……。

戸越が「自分は絶望しているのだ」という事実に固執している姿が哀れで愛おしかった。庄司唯生として生活を始めることになり、田舎の人間にも歓迎され馴染みだしてしまっても、シズミに指をにぎられ安らかな眠りの波がこようとも、それに自ら抗っていくスタイル。これはだいぶこじらせている。
又吉直樹「劇場」や「火花」と通じるものを感じた。ままならない人間の深淵をみせられているよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月20日
読了日 : 2019年10月20日
本棚登録日 : 2019年10月20日

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