しまった!!
また、この人の本を手にしてしまった・・・。

以前読んだ本が、『まんがで簡単にわかる!日本人だけが気づかない危機 日本消滅』だ。
こちらはタイトルにもあるとおり、所々に漫画が挿入され、表紙自体にも漫画が描かれており、本書と雰囲気が違ったので気づかなかった・・・。

そして内容は、タイトルこそ違うがほぼ同じ。
日本政府のダメさ加減をあげつらい、それにより2025年に日本が消滅するという飛躍した持論を展開する。

前著のレビューにも書いたが、著者は医者で、前著や本書でも様々なデータを挙げながら医学的に切り込んで行くところなどは読み応えがあるのだが、かなり偏った意見が散見されるため、せっかくのその検証も鵜呑みにすべきでないと、本書を読んで改めて感じた。

例えば、マスクは感染予防に効果がないとするくだり。これ自体の当否について、私は医学的な知見は持ち合わせていない。

ただ、本書では、「2023年4月まで、日本人の99.9%がマスクをしていたが、感染者数はどんどん増え、第何波、第何波と襲ってくること自体が、マスクをしているかどうかは感染には関係がないということをしめしています」と書かれている。

さらに、「もしマスクに効果があるとしたら、感染者数が張っていかなければなりませんが、2022年において日本の感染者数が世界最大となったことはみなさんの記憶にも新しいでしょう。」と続く。

この主張について、何を根拠に「2023年4月まで日本人の99.9%がマスクをしていた」といっているのか?
具体的な数字を挙げるならその根拠を挙げるべきである。

また、「2022年に日本のコロナ感染者数が世界一になった」とあるが、これは日本におけるPCR検査数が多いからではないか?

このように、一見最もらしいことを言っているようだが、少し考えれば著者の主張がおかしいことに気づくはずだ。

また本書の眼目である、コロナワクチンの当否についても、著者はこれを否定する立場から、ワクチン接種者には色々な病気が発症しているとか、今後様々な副作用が現れてくるという。

これらは著者が医療の現場でまた専門家としての知見に基づき書かれている点で、一部傾聴すべき点も含まれている。

ただ詳細に記載内容を見てみると、ワクチンの特質からどのような病気が発生していて、その因果関係をはっきりと論証しているのは、mRNAワクチンと血管系の病気(血栓症など)だけである。

それ以外は、「そのような論文がある」とか特定のデータを引っ張り出してきて著者が推論しているレベルに過ぎない。
つまり、論証が甘いのだ。

この点こそ、最も力点を置いて本書で記述されるべきところ、ワクチンと後遺症についてはこの程度でお茶を濁し、その後はなぜか日本経済の話しやコロナをめぐる政府の対応のまずさなどの批判と続く。

なんかだまされた気分だ。

内海聡、この名前は覚えておこう。

2024年5月12日

読書状況 いま読んでる
カテゴリ 健康

大好評で映画化もされた、『変な家』の続編。

今回は11軒の変な家の間取り図を携え、その家の関係者に筆者が面談し、最終章で筆者が相談に行った設計士栗原氏が紐解きや解説をするという展開。

はしがきに本書を読み進めるうえで、重要なメッセージがある。

それは、11軒の家にまつわるエピソードは、「無関係にみえるかもしれない。しかし、注意深く読むと、一つの「つながり」が浮かび上がってくる」と書かれたところだ。

これを意識して読み進めた人は、より本書を楽しめたのではないか。

11件の家の関係者とのやり取りの中でも、7割から8割くらいはなんとなく謎が解けそうな雰囲気になるのだが、後に最終章で栗原建築士が検証すると矛盾があったり間違っていたりすることがわかる。

この一瞬解決したように見せて更にもうひとひねりある展開は前著と同じで、本書によりホラー小説としての深みを与えている。

また同時に、どことなく不吉に漂う空気間も健在で、ゾクゾクしながら読む楽しさを味わえる。

ただ、最終章の建築士の検証は、個々のストーリーの連関性をわかりやすく解説し納得感を生じさせる半面、ややボリュームが多いため、既述の内容と重複する部分が目立つ。

また、本書の特徴である「どこか薄気味悪い、ゾクゾクする楽しさ」よりも「謎解きとその答え合わせ」に重点が移ってしまっており、この点においてホラー小説としての醍醐味という点では前著に引けを取る印象を持った。

とはいえ、400頁を超える大著を飽きずに読み切らせる力量には改めて感服した。

2024年5月4日

読書状況 読み終わった [2024年5月4日]
カテゴリ 小説

50歳にもなると、自ずと気になる健康診断。
そんな不安にこたえてくれる一冊。

健康診断の項目ごとに、それぞれの検診がどのようなことを目的に行われ、そこで異常数値が出た場合、どのような病気にかかる可能性があるかなどが、具体的に書かれている。

自身の健康診断結果を片手に本書を読むと、より理解が深まると思われる。
お勧めの一冊。

2024年4月29日

読書状況 読み終わった [2024年4月29日]
カテゴリ 健康

今まで、NISA関係の本を数冊読んできたが、最もためになった一冊。

まず本書の体裁として、ページの右側に説明文、左側にはそれに対応する図表やイラストがカラーで描かれ、さらにところどころ漫画が挿入されており(これは好き好きあると思われるが)、理解しやすい工夫がなされている。

また、内容的にもNISAってそもそも何?、というところから、新NISAがいかにすごいか、積み立て投資枠と成長投資枠の違いや使い分け法など基本的かつ重要な項目が、わかりやすく書かれている。

さらに、新NISAにて非課税期間が無期限になったことの実質的な意味やNISA口座で損失が発生した場合の損益通算・繰越控除の可否など一歩レベルの高い話も分かりやすく書かれている。

また、本書はNISAだけでなく、インフレや円安などのマクロ経済の概念や、キャピタルゲインとインカムゲイン、ドルコスト平均法や複利効果といった投資全般の基本的な考え方など、NISAを理解するために必要なことに言及されている点もよい。

投資初心者でこれからNISAを始めようという方には特におすすめしたい一冊。

2024年4月29日

読書状況 読み終わった [2024年4月26日]
カテゴリ 投資

「ハウスフライ効果」という言葉をご存じだろうか?

これは、オランダのアムステルダム空港で、「男性用の小便器に”的”としてハエを描いたところ、おしっこが便器の外に飛び散る量が劇的に減った」という事例に基づいて名付けられた、認知バイアス効果の総称のこと。

この認知バイアスとは、私たちの行動は、思いもよらない何かに影響されている、つまり、私たちの潜在意識に働きかけ、私たちを一定の方向に導き、または突き動かしているものが認知バイアスということだ。

そしてこの事例は、これまで正しいとみなされてきた「人を動かすための法則」にことごとく反している。

なぜなら、人の行動を変えたいときは、その内容を言語で明確に説明し、体系的な情報やロジックで示し(「ロゴス」=論理性)、感情に訴えかけ(「パトス」=情熱)、信頼できる方法(「エートス」=信頼性)で伝えることが大切だと考えられてきたからだ。

そして本書は、私たちの生活を取り囲む様々な「ハエ」(認知バイアス)の正体を明らかにし、それらとうまくつきあっていくための有益なアドバイスを提供すること、とある。

ここまではよかった。
そして、続く内容に期待が高まった。

しかし、現実は、「ハエ」のような事例が次から次へと紹介されるが、「ハエ」の事例からも明らかなように、それらは、(少なくとも私には)「オチ」が見え見えのものがほとんどで、それらを得意げに紐解かれても、何の驚きもないし、関心も起きない。

また、このようなオチのない具体例が100ページ近くも延々と続き(もしかしたら最後まで?)、で、そこから何が言えるのか、または何を言いたいのかというまとめや抽象化らしきものもないまま、さらに事例の紹介が延々と続くという具合で、その段階で飽き飽きして、読むのをやめた。

切り口は面白かっただけに、腹落ちするまとめなどがないまま、延々と具体例の羅列が続いた点はまことに残念。

2024年4月29日

読書状況 読み終わった [2024年4月22日]
カテゴリ 動物行動学

「余白思考」、この聞きなれない言葉はなんだろう?

著者は、アーティイスト・アートディレクターで、2021年の東京オリンピックの表彰式の監修をしたり、ニュース番組にコメンテーターとして出演している。

確かに、アートには余白は必要だろう。
本書でもその点に言及しているくだりがあるし、実際そこから本書の気づきを得たのかもしれない。

では、「余白思考」とは何か?
それは本書の第1章で詳細に語られる。

まず最初に、著者がいう「余白」とはどういう意味か?

通常、余白というと、「何かを書いた後に残ってしまったスペース」というのが辞書的な意味となるであろう。

しかし本書でいう「余白」とは、
「書かれている何かを引き立たせるために、あえて余らせているスペース」となる。

さらに、これが転じて、
「あらゆるものが入る可能性にあふれた空間」とか「本当に大事なものを守るためにあえて余らせている時間や力」と非常にポジティブな言葉として定義される。

換言すると、自分自身の中にある大切な「核(コア)」の部分と外の世界の間にある自由なスペース。

他者とのコミュニケーションの場面では、この余白(スペース)が緩衝地帯となって、自分や他人のコアには踏み込まず、その手前の余白にメッセージを置きに行く、そして相手はそれを自分で取りにくる、このような関係性を構築することを推奨する。

この説明でもなかなか伝わりづらいかもしれないが、一言でいうと、「心に余裕やゆとりを持つ」ということなのだと私は理解した。

こういうと身も蓋もないが、ほぼ適格に「余白」概念を説明できていると考える。

そして、この「余白思考」を著者がどう実生活の場面で運用してきたかが、第2章以降で具体的に語られるが、これは正直あまりピンとこなかった。

言っていることは理解できるし、またある意味真理だとは思うのだが、あまり話自体に新鮮味がなかったことと、「余白」に無理やり紐づけているような話も散見されたからだ。

ただそんな中にも、印象に残った言葉があったので、最後にそのいくつかを紹介したい。

「怒られたとしても、責められたとしても、そのすべてを正面から受け止める必要はないんじゃないか、怒られたからといって自分を見損なう必要はないし、怒られることを恐れて自分の気持ちをごまかすのはもったいない」

「曖昧なままで、つまり未完成の状態で出力してしまえる能力。これはとても大事なことです。」

「思考の中に余白があると、「まぁ、いいか」と自分を納得させることにストレスがなくなり、(中略)他者の評価にとても寛容になれます(「気にならない」「気にしない」ということ)。
この「気にしない」力を、現代の人たちはもっと鍛えた方がいいと思います。」

「スランプに陥ったときは、とにかく「手を動かし続ける」ことが大切。」

「出会う人たちは、「一緒に遊ぶ人」。仕事の場で出会ったとしても受発注を前提にした利害関係ではなく、おもちゃで一緒に遊ぶチームであり、仲間という感覚です。」

2024年4月20日

読書状況 読み終わった [2024年4月20日]
カテゴリ 思考法

これから不動産業を始めようとする人に、業界歴約50年、齢77歳の著者が、自身の経験に基づき、そのノウハウを伝授する。

著者は北海道函館で小坂総業㈱を経営しており、いわゆる「町の不動産屋さん」といった感じ。

内容的には、独立・企業の仕方や心構え、不動産・不動産業とは何かから社名のつけ方や社員の育て方まで多岐にわたり、実務経験に基づいたわかりやすい説明となっている。

特に不動産取引での著者が失敗した事例(道路と敷地の間に細長い他人所有土地があったことを見落としてしまった例など)や無指定地域のまとまった土地を買って戸建分譲した話など、興味深いエピソードが紹介される。

思いのほか面白い内容で、不動産業で独立しようとする人にはもちろん、これから不動産会社に就職しようとする人にもためになる内容といえる。

2024年4月14日

読書状況 読み終わった [2024年4月13日]
カテゴリ 不動産

一言で言って、非常に内容が薄い。

55歳という定年間近の時に何を考え、その後どう生きていくかを説く内容だが、それがあまりに凡庸で驚いた。

例えば、55歳という年齢を考えると、残された人生はそこまで長くないことを前提に、「絶対にやめるべきこと」をリスト化するとか、これと同じ流れにある話では、人間関係は数を増やす必要はない、無理なことは最初から引き受けないなど。

そして、「人生後半で大切なのは、生産性や効率よりも『100%自分らしく生きる』こと」といい、そのためには、「時間の質」を高めることが必要。

「時間の質」を高めるとは、
・「やるべきこと」を明確にして、余計な物事や人間関係に時間と労力を費やさない
・本当に必要なことは何かを見極め、心躍ることに時間を使う
・人生のゴール(最期)から逆算して、今やるべきことを最優先に行動する

確かにおっしゃる通りなんですが、残念ながら、なんの新鮮味もないのです。

2024年4月13日

読書状況 読み終わった [2024年4月13日]
カテゴリ セカンドライフ

著者は元金融マン。

略歴を簡単に紹介すると、広島大学を卒業後、山一證券に就職、しかし1997年(著者が31歳の時)に同社が倒産。

その後、中堅銀行に転職し、43歳の時に不動産投資(区分マンション)を始め、2022年6月末現在で中古の区分ワンルームマンションを中心に一棟アパートや戸建てを含めて計20戸のオーナー。
銀行は55歳の時に早期退職し、賃貸収入(月間の手取り家賃収入100万円)で生活している。

このような経歴を見ると、著者が不動産投資をしていることについては不思議はないが、投資対象として株や投資信託は否定している点は不思議。

その理由については不動産投資に比べてリスクが高いからということしか書かれていないが、投資信託でも積み立て型のものであれば、長期間の投資でリスクはヘッジできるはず(ドルコスト平均法)で、この点専門と思われる分野にあまり言及がないのは残念。

ここをも少し厚く書けば、より不動産投資の優位性がはっきりしたのにと思う。

また、著者は不動産投資を始めた当初、不動産には明るくなかったようだ。
日本財託(重

2024年4月7日

読書状況 読み終わった [2024年4月7日]
カテゴリ 不動産

富裕層向けの不動産投資術指南書。

著者は慶応大学在学中に企業し、卒業後はリクルートに入社し不動産会社向けコンサル業務に従事、その後、㈱有栖川アセットコンサルティングを設立し、富裕層向け不動産コンサルティングを行っている。

また、著者は慶応卒業生で構成される「不動産三田会」にも所属し、そこからも有益な情報を得ているようだ。

私自身、不動産業界にいるので、三田会に知人もいるし、本書で書かれていることもおおむね首肯しうる内容と言える。

そして、本書の特徴は「富裕層向け」に書かれていることだ。
私自身いわゆる富裕層ではないし、富裕層を相手に仕事をしているわけではないが、かといって本書がためにならなかったかというとそうでもない。

本書の特徴を挙げると、富裕層に特化しているため、以下のようになる。

①銀行の与信を心配する必要がない
②減価償却等を有効に使って節税する
③①から、銀行からできるだけ融資を引いてレバレッジを利かす、短期間で返済しない
④区分ではなく一棟物件を選ぶ
➄お買い得物件(訳アリ物件など)に手を出さない
⑥一等地の不動産を買え

①は説明するまでもないだろう。

②については、節税に目を奪われて収益性の低い物件に手を出さないよう注意喚起する(手段の目的化)。

③は特に今は低金利であることや相続発生時には、借入金は相続税評価額を計算する際に資産から差し引かれ、節税となる。
例えば、純資産額10億円の人が、自己資金2億円を持ち出して借入金10億円で不動産を買った場合
不動産12億、その他資産8億
→相続税計算上、評価額が5割に圧縮されたとすると(平均5~6割程度圧縮される)
不動産12億→6億、その他の資産8億(合計14億)となる
→さらに、借りれ分の10億円を相殺すると、
14億ー10億=4億、これが相続時の資産評価額
また、手元になるべく現金を残し、キャッシュフロー効率をあげる。

④は資産家であるため、そもそもまとまったお金を持っているので区分ではなく一棟という話と、一棟の方が利回りがよく、修繕なども自身の判断でコントロールできるからだという。
個人的には必ずしも一棟の方が利回りがいいとは言えないと思うがいかがであろうか。

➄安いものには必ず訳(物件の瑕疵など)があるということ。著者は基本的に不動産には出物がないこと、また富裕層がそのようなリスクをとってまで安い物件に手を出す必要はないという。
これは、金はあるけど不動産の目利きができない富裕層には当てはまるが、不動産価値の見極めができる人であれば、必ずしもあてはまらないのではないか。

⑥一等地を薦める理由は、賃貸需要が旺盛で、資産価値も落ちずらいということのほかに、メンテナンスコスト(大規模修繕や原状回復費用など)は一等地でも地方都市でも大してかわらないため、この点では一等地のほうが有利(例えばエアコン交換に10万円かかった場合に、家賃が15万円の一等地物件と家賃が5万円の地方物件の例を考えるとわかりやすい)。

このように富裕層の不動産投資に特化したやや珍しい本だが、一般人の不動産投資にも役立つ情報もあり(特に法人化のメリットなどの部分はよかった)、一読する価値のある本。

2024年4月6日

読書状況 読み終わった [2024年4月3日]
カテゴリ 不動産

統計学の基本用語や概念の説明、それらを仕事でどう活かすか、最後はデータサイエンティストに関することが書かれている。

本書は、文章が簡潔で、図表が多用されているなど、コンパクトに統計学を知るにはよいが、逆に説明がシンプルすぎてわかりにくい部分もあった。
特に、前半の統計学の概念のところなどは、苦手だった数学の授業を思い出し、重たい気持ちになった笑。

2024年4月7日

読書状況 読み終わった [2024年4月6日]
カテゴリ 分析法

「深い話」をするための方法論が具体的に書かれている。

「深い話」とは、簡単に要約してしまうと、①多角的に検討された意見、②具体的で本質的な意見のこと。

①について著者は、「角度のある意見」という表現を使っているが、要は、今までとは別の視点に立って考えることで本質が見えてくることがあるということ。

また、②についてはあまり説明は必要ないだろうが、具体例を挙げながら、最後にそれを抽象化して、自分の見解を述べるというステップを踏むと話に深みが出るという。

さらに本書では、こういった思考力を養う具体的な方法や実際に話すときのやり方(話し方や聞かせ方)などにも言及されており、具体的かつ実践的なので、参考になる部分を実生活の中で取り入れていけば、コミュニケーションスキルの向上に寄与するものと思われる。

2024年4月7日

読書状況 読み終わった [2024年4月1日]

やたらと偏った思想の著者による本。

著者の論調は、日本の政治家やマスメディアが日本を滅ぼそうとしている、政府も政治家もすでに日本ではない(←全く意味不明)という具合。

そして、著者曰く、日本は2025年には消滅するとのこと。
ただ、「消滅」って何なのか、どういう状態を言うのか、はっきり書かれていない。
その根拠も希薄。

ということで、なんだかなあという印象が拭えない本であるが、著者は筑波大学医学部を卒業した医師である。

また、本書の基本コンセプトは前述の通り、私にとっては全く意味不明だったが、本書での個別の検証については、評価できる点も少なくない。

例えば、コロナ禍であった2020年の日本の年間総死亡者数が、前年より8,000人も減ったこと(それまでは2010年以降毎年志望者数は前年比で増加してきていた)、そしてそれは、「医原病」が減ったからだという主張。

医原病とは、医療行為が原因で生じた病気や病状の悪化のこと。
そして、コロナ禍で今まで病院に罹っていた人が病院に行かなくなり、かえって死亡者も減ったという話。

要は、病院では不適切、または不必要な医療行為が行われ、それによって逆に寿命を縮めてしまう人が多くいたということだ。

真偽のほどは私には分からないが、これはなんとなく合点がいく話しだ。

このように、個別の論点では、具体的なデータを挙げながら、ある程度説得力のある論を展開しているだけに、何の根拠もなくむやみに日本滅亡を訴える著者の姿勢には疑問を感じざるを得ない。

2024年3月26日

読書状況 読み終わった [2024年3月26日]
カテゴリ 政治

もともと不動産投資に興味があり、ちょうど今(2024年3月)、自分自身が50歳ということもあり、この本を読んでみた。

自分は不動産業に従事ているものの、自分自身で不動産投資はしたことがない。

一方、著者は普通のサラリーマンだったが、50歳で子会社に出向して3年目となり、会社に依存しない生き方を模索し始め、不動産投資にたどり着いた。

これは今の自分にも何かピッタリと当てはまり(私は子会社出向ではなく、4月転勤の内示が出たことやそろそろ会社人生後のセカンドライフに思いをはせるようになった点など)、俄然興味が湧いた。

著者はその後、2010年(著者が53歳のとき)に不動産(いずれもワンルーム)投資を始め、2022年4月までに合計17戸の物件を取得している。

エリアはいずれも23区内(城南・城西エリア中心)で、専有面積は13~24㎡弱、今時のワンルーム(1K含む)が25㎡以上の物件がほとんどであることを考えると、少し築年が古く小ぶりなものに投資していることが分かる(もちろん、その方が購入額が安くて済むのだが)。

では、なぜ50歳からの投資がいいのか?

それは、個人差はあるだろうが、この年になると子育てなども終わりが見え、ある程度お金に余裕ができる、会社などでも課長以上などの役職についている人も多く、社会的な信用が高いことなどを理由に挙げる。

もちろん、できることなら投資は若いうちからはじめるにこしたことはないが、50歳からでも決して遅くはないのだ。

また、著者は所有物件の購入や購入後の管理を(株)日本財宅という会社に任せている。
同社の田島浩作という社員は本書の冒頭で、「著者の新書に寄せて」という文章まで寄稿している。
不動作投資経験のない人がこのような心強いパートナーを持つことは大切だと思う。

そして、本書の中身だが、書かれている内容は不動産投資の王道的手法が書かれているが、個人的には、特に新しい発見はなかった。

ただ、一般のサラリーマンが53歳という年から不動産投資をはじめて10年ほどで、どうやって家賃の手取り収入1,000万円以上(年間)を達成できたか、それが著者の半生や時々の思いとともに綴られており、それらも含めて楽しめるのであれば、それなりに面白い本だと思う。

なお、著者がこのような成功を納められた理由は、前述の日本財宅という心強いパートナーがいたことはあるとは思うが、そのほかにローンの繰り上げ返済を積極的に行ったこと、それから投資のスタートが2010年とリーマンショック(2008年)の後で、不動産価格が下落していたタイミングであったことが大きい。

逆に今は、不動産価格は高止まりし、しかも昨日(2024年3月19日)、マイナス金利政策が解除され、今後長期金利が上昇する可能性もあり、著者は、「やらなければ、セレンディピティは起こらない」というが、この点は著者と大分経済環境が異なっており、残念ながら、不動産投資には躊躇せざるを得ない状況だ。

2024年3月20日

読書状況 読み終わった [2024年3月18日]
カテゴリ 投資

人から自分の言動を否定されたら、誰でも嫌な気持ちになるだろう。

本書には、「否定する」とはどういうことか、またそれを避けるためにはどうすればいいかなどが具体的に書かれている。

まず、本書で指摘している「否定」とは、以下のものを指す。
・相手の言葉や考え、行動の結果を認めない
・相手の話や意見を打ち消す、聞かない、奪って違う話をする
・相手のミス・失敗を責める
・悩みなどの相談などに対して真剣に向き合わない

真っ向から相手の意見に反対する文字通りの否定から、部下からの報告を話半分で聞くなどなどの態度(非言語)も否定に含まれるという。

そして、多くの人が無意識のうちについ、否定をしてしまっている。

まず、この指摘には真摯に耳を傾け、自分の言動を見直さなくてはと素直に思った。

また、人間同士のコミュニケーションで否定が出てくる場面で最も多いパターンは会社の上司と部下ではなかろうか?

つまり、上司がその優越的地位を利用して、部下の言動を否定したり、叱責したりする場合である。
著者はこれを、「否定は「上から目線」が生み出している」といっている。

ただ、これもやり方を間違えると、部下は急に不安になったり、萎縮したりして、結果的にパフォーマンスが低下して、結局組織としてマイナスにしかならない(部下の心理的安全性を上司が毀損し、その結果組織全体に青く影響を及ぼしている)。

ただ、このことに気づいていない上司が多いことが問題だ。特に、感情的になって怒り出すタイプの上司は、組織を単に悪い方向に自らが引っ張っていることに無自覚なので始末が悪い。

これは、その組織に属する人すべてにとって不幸なことであり、管理者としては絶対に避けなければならない。

では、これを避けるために心がけるべきコトは何か?

一言で言うと、言われた相手がどう思うかに思いをはせること。
こう言うと、なんだかありふれた答えのように聞こえるかもしれないが、人の言説を否定する場面を考えると、否定している人間も冷静さを欠いた状況であることが多く、相手の気持ちを考える余裕などもてない場合が多いと思う。

つまり、怒りを覚えたときには6秒待て、というアンガーマネジメントど同様の発想で、相手を否定しそうになったら、まず立ち止まって一呼吸入れることが重要と言うこと。

逆に今度は自分の意見を否定された人はどのような心持ちでいればいいか。

これは結構実践的だが、「相手の否定のうち、いらない部分はすべてザーとこぼしてしまう」「役に立ちそうな、必要だと思われる部分だけを残す」。

実はこれ、私が普段会社などで実践していることなので、これは多いに納得できた。

人にもよるが、言っていること自体は間違っていないが、その言い方が嫌みっぽいとかくどい場合などに有効な手法であろう。

また、ここで注意しなくてはいけないのは、いわゆる、「馬耳東風」とは異なり、必要なところは汲み取るという姿勢を同時に持つことであり、この点は銘記すべきだ。

「否定しない習慣」、簡単そうで意外に奥が深そうだ。

2024年3月17日

読書状況 読み終わった [2024年3月17日]

60歳からは無理せず、生きたいことを生きていくことを指南する本。
それを象徴する著者の言葉が、
「老いを過剰に恐れず、人生を楽しむ姿勢を持ち続ける人こそが、健康的で、かつ幸せにいけている」という言葉だ。

著者の和田秀樹氏(老年精神科医)も60代中盤で、自身の経験も踏まえて、具体的な生き方が示される。

本書は前半部分は、主に60代以上の高齢者が気をつけるべき健康上の留意点が、後半は趣味やライフスタイルなど生き方に関することが書かれている。

このうち、前半部分は医師である著者が老人が気をつけるべき食事や健康診断結果の読み方などが書かれていて、自分にとって有益な情報が多かった。

他方、後半部分は生き方に関する著者の持論が展開される。無理せず気ままに生きたいように生きていくことを奨励する基本線には同意するものの、医師である著者が書かなくてもよかったかなと言う印象で、蛇足感が否めない。

前半部分で特に印象的だったのは下記の点。

①食生活の我慢は免疫機能の低下を招く

②糖質や塩分を過剰に控えるのはかえってよくない

③摂取可能なアルコール量は個人差があり、二日酔いにならない程度なら問題ない

上記の内、近時の俗説を真っ向から否定する②と③には驚いたが、酒飲みの私には、もちろん③が一番深く刺さった。

がしかし、著者が高血圧で糖尿病を患っているのはご愛敬?

2024年3月17日

読書状況 読み終わった [2024年3月17日]
カテゴリ セカンドライフ

「よい説明」の”型”とはなにか?

著者は、東京大学大学院卒業後、25歳で駿台予備校の講師となった(当時最年少)。

私も、大学進学のために大手予備校(別のところ)に通っていたが、予備校講師はそれこそ説明の巧拙が人気に直結する職業であり、このよな著者の経歴から、本書への期待は否が応でも高まった。

まず最初に、聴き手が人の話に興味を持つためにどのようなプロセスを経るか。

人(聴き手)には、自分が知らないゾーンと知っているゾーン(人の頭の中)がある。

そして、知っているゾーンには3つの壁があるという。

それらは、外側から「未知の壁」「自分ごとの壁」「習得の壁」であり、一番内側の「習得の壁」の内側に自分ゾーン(自分と一体化すること。聴いている話しを聴き手が面白いと思う段階。)に至る。

3つの壁をもう少し詳しく説明する。

「未知の壁」
「話の内容がまったくわからない」ということ。
こうなると、当然聴き手は、話しに興味を持たなくなる。
言い換えると、いかに聴き手に「おっ!」「ほう」などと思わせることができるか、つまり聴き手の興味・関心を引けるかが重要と言うことである。
最初にして最大の関門といえる。

「自分ごとの壁」
人がもっとも興味があるのは、「自分に直接関わること」。
「自分ごとの壁」を突破するためには、聴き手に「自分とどう関係しているのか」をイメージさせられるかがカギになる。

「習得の壁」
「自分に関係する内容だけど、今は不要・自分には無理そう」という壁。
ここでは、「どうにかして今すぐ自分の中に取り入れなくては!」と聴き手に思わせることがカギとなる。

そして、この3つの壁を壊しながら、ネタが「自分ゾーン」へと深化(自分と一体化)していくことで、聴き手の「つまらなさ」が解消され、そのネタを「おもしろい!」と思うようになる。

言い換えると、聴き手の脳が「その情報を自分のものとしたい!」と欲するようなおもしろい説明をできるかどうかが重要ということ。

以上が本書の総論部分で、その後の各論では、よい説明をするための11の「型」が具体例とともに紹介される。

ただ、この各論部分は話しが具体的でわかりやすいとはいえるが、あまり新しい発見はなかった。

要は、一言で言えば人に物事を説明するときに、常に「相手がどのように受け取るか」、「どう説明を工夫すれば相手が分かりやすくなるか」を念頭において話すことを心がけることが説かれている。

この部分は自分にとっては、実際に実行できているかはともかく、常に念頭に置いていることであり、新鮮味はなかった。

残念ながら、著者プロフィールや総論の切り口から抱いた期待値には達しなかったというのが本書の評価である。

2024年3月9日

読書状況 読み終わった [2024年3月9日]

専門性とはなんだろう?

著者は、早稲田大学院理工学部を卒業し、電通のトランスフォーメーション・プロデュース部長を務める傍ら、青山学院大学・東京音楽大学などで非常勤講師を務めている。

電通の社員が書いた本ということで、どんな内容か期待したが、結論からいうとやや期待外れ。

本書は前半が専門性を身につける必要性、後半はその手法について書かれている。

前半部分は、やたらとAIの台頭により、人々の仕事が奪われるという危機感を煽る内容で辟易した。

確かに、AIは人間をも凌駕しつつあり、人間の仕事の大部分を担うことができるようになるかもしれない。

しかし、その一方で、AIとの競争ではなく共生の道を模索する動きもあり、必ずしもAIによって多くの仕事が奪われとは思えない。

また、著者が言う専門性というのも、特に新鮮味がなく、この程度であれば、結局はAIに凌駕されてしまうのではないか、という身も蓋もない感想を持った次第。

後半の専門性を身につけるための手法も、例えば、本を読むときには、「何か自分の視点や問題意識をもって臨む」ことが重要などと、ありふれた指摘も散見され、新鮮味がない。

著者自身は経歴からも能力の高い方なのだと思うが、本書の内容からはそれをうかがい知ることができなかったのは残念。

2024年3月9日

読書状況 読み終わった [2024年3月5日]
カテゴリ 自己啓発

「すぐやる習慣」、身についたらいいよねと思いつつ、
つい先送りにしてしまうのが人間の性。

そんな自分に、本書がどんないいヒントを与えてくれるのか!?

「すぐやる」というと、ややもすると昭和の体育会系のような軍隊スタイルを想起する人もいるかもしれないが、本書のスタンスはそれとはまったく逆のもの。

本書は、「人生を変えるのは、習慣です」という言葉からはじまる。

そして、「すぐやる習慣」を手にするためには、
「心を軽くすること」とつづく。

そう、ここが本書の新しいところ。

普通、あることを「習慣化」しようとするためには、
「自分に厳しく」とか「行動を律する」という、前述の昭和スタイルを推奨するのかと思われがちだ。

しかし、本書は「習慣化」のためになすべきことは、
「自分に優しく」することだという。

なんだ、この「心を軽くする」とか「自分に優しく」って!!

もちろん、このゆるい感じのスタンスに怒っているわけではない。
斬新さに驚いているのだ。

そして、この切り口から、「すぐやる習慣」をどのように体得できるのか、のっけから俄然興味が沸いた。

例えば、自分の部屋が散らかっているとする。

まず、この状態をどう思うか、これは人にもよるかもしれないが、多くの人は、なんか嫌な気分になるのではないか?

そして問題はここからだ。

嫌な気分になったから、すぐに片付けができる人、これは本書でいう「すぐやる習慣」が少なくとも部屋の片付けにおいてはできている人だ。

これに対し、私などは散らかっていることに問題意識は持ちながら、なんとなく放置してしまうタイプだ。
まさに、これこそ、問題を発見しても、「すぐにやる」ことができない状態。

ではなぜすぐにできないのか?

それは自分の場合、単純に面倒くさいからということもあるし、どうせ片付けてもまたすぐに散らかる等という思いが頭をかすめるからだ。

こうやって、「すぐやる」ための障壁を自ら高くしてしまっている、もう少しわかりやすく言うと、やらない理由探しをしてしまっているということ。

そこで著者は、片付けであれば、全体の片付けをしようとせず、まずは1つだけやってみることをすすめる。
より正確に言うと、「ひとつしか片付けてはいけない」というルールをつくる。

そうすることで、やらない障壁が大分低くなり、「すぐやる」ための瞬発力が上がるので、「すぐやる」ことが習慣化する。

また、タスクが複数あるような場合、軽いものから取りかかり、リズムに乗っていくことが重要、そうやってリズムに乗っていくうちに脳が活性化され、いざ重要度の高いものをしようとしたときに脳が働いている状態にできるので、スムーズに取りかかることができる。

これこそまさに、「すぐにやる」ことの効用だろう。

また、片付けてもどうせすぐに散らかるという発想は、何か新しいコトをやろうとするときに成功よりも失敗への恐怖心が勝り、一歩踏み出すのを躊躇するのと同じ、いわゆるネガティブ思考だ。

そして、「すぐやる」ことに対しての一番のメンタルブロックはこの「失敗」である。

しかし、こういった新しいことへの不安や恐怖は成長の合図である。

そして、このネガティブ思考に対しては、「3割りできていれば」OKという風に考えることをすすめる。
つまり、足りていない7割ではなく、できている3割に目を向けることが大切だという。

言い換えると、1の失敗を気にするよりも、1の経験を増やすと考えることが大切ということ。
その結果、「失敗貯金を殖やせば増やすほど、人は最強になれる。」

さらに片付けで言うと、ひとつ片付けると次もやりたくなるという真理が働き、これをきっかけに片付けのスイッチが入ることもままあるという。

確かに、私はこのタイプなので、この説明は非常に腹落...

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2024年3月2日

読書状況 読み終わった [2024年3月2日]
カテゴリ 自己啓発

今をときめく歴史学者、磯田道史氏が「日本史」をテーマに、様々な角度から、その道の専門家と行った対談をまとめたもの。

対談のテーマや対談の相手方などは下記の通りである。
①「磯田道史ができるまで」阿川佐和子(2018年)
②「日本史のリーダーを採点する」半藤一利(2012年)
③「日本人の不思議な起源」篠田謙一、斎藤成也(2013年)
④「信長はなぜ時代を変えられたのか?」堺屋太一、小和田哲男、本郷和人(2008年)
⑤「戦国武将の養生訓」酒井シヅ(2012年)
⑥「徳川家康を暴く」徳川家広(2023年)
⑦「幕末最強の刺客を語る」浅田次郎(2011年)
⑧「歴女もハマる!幕末のヒーローたち」杏(2010年)
⑨「「龍馬斬殺」の謎を解く」中村彰彦(2010年)
⑩「脳化社会は江戸から始まった」養老孟司(2003年)
⑪「鎖国か開国か?グローバリズムと日本の選択」出口治明(2017年)
⑫「幕末からたどる昭和史のすすめ」半藤一利(2009年)

本書は今年(2024年)に発売されたものだが、上記の通り、対談自体は実は12本中9本が10年以上に行われたものである。

テーマが日本史であるため、対談されたのが昔だからと言って、何か問題があるわけではないが、例えば古人骨のDNAの研究を行っている篠田氏らとの対談(上記③)の末尾には、ここ10年でこの分野の研究が革命的に進展したとして、内容の一部訂正・補足を行っている。

対談者のうち、自然科学分野に即するのはこの③くらいで、あとはほとんどが社会科学者であるため、このような補足が必要となるのは③だけである。

また、この③は日本人のルーツ(縄文人か弥生人か)などを検証するもので、内容的にも興味深かった。

このほか、戦国武将の食生活などから健康状態を考察した⑤や徳川宗家第十九代当主と家康について語った⑤は、徳川の子孫ならではのエピソードが聞けたことと、逆に徳川家の人でも知らないマニアックな知識を磯田氏が披瀝している点などが面白かった。

2024年3月3日

読書状況 読み終わった [2024年2月29日]
カテゴリ 歴史

「早起き弁護士」として知られる韓国人女性による書。

韓国人といっても著者の経歴は多彩で、韓国で生まれるも親の仕事の影響で小学生の時からニュージーランドへ移住、その後、親は韓国に帰ってもひとりでニュージーランドにホームステイ、その後アメリカに渡りニューヨーク州とジョージア州2州の弁護士資格を取得し、現在は韓国の企業で弁護士として働いている。

なかなか面白い経歴だが、残念ながら本書の内容は期待外れだった。

なぜなら、内容的には「早起きは三文の得」ということわざ以上の中身がないからだ。

要は朝4時30分に起き6時までの1時間半の時間が、1日の中で唯一自分が自由にできる時間(著者は「日常のストレスを解消する時間」とか「人生のボーナス」等とも言っている)で、その時間に自分磨きをしましょうという内容。

この早起きの時間に、昨日できなかった仕事や宿題をすれば、それは当然仕事や勉強を前に進めることができ、自身のスキルアップなどが図れる。

ただ、著者はこの朝の時間には、必ずしも勉強や仕事をしなくてはいけないわけではなく、アロマキャンドルを灯し、静かな音楽を聴きながらコーヒーを飲み、本を読むなどでもいい(毎日これでは、あまりスキルアップにはつながらないだろうが)。

また、この早起きは毎日ではなく週3日程度でもよく、また、起きる時間も、「4時30分」にこだわる必要もなく、前日の夜寝るのが遅くなれば、その分起床時間をずらしていいなど、比較的柔軟に運用している点は現実的だと感じた。

そして著者は、「このような朝を過ごしてみると、自分に与えられた1日、そして自分自身を大切にする方法に気づき、自然と自尊心が高まる」というのだが、どうもこの点が腹落ちしない。

朝早起きするという、普通の人にはかなりハードルの高い「行」に取り組むには、モチベーションとして余りに弱く、きっとこれが、本書が期待外れだったという感想につながるのであろう。

無論、これは私の個人的な感想なので、これで意欲が湧く人は早起きを実践すればいいと思うが、私にはあまり響かなかった。

2024年2月23日

読書状況 読み終わった [2024年2月23日]
カテゴリ 自己啓発

業務上、データを数値化してそれを分析する必要に迫られたため、本書を手にした。

著者は、早稲田大学を卒業後、NTTドコモに就職するも、いわゆる旧来の日本企業にありがちな、定性的な人事評価などに不満を抱き、早々に同社を退社。
その後、人材サービス会社であるジェイコムホールディングス(株)(現ライク(株)、ケーブルテレビのジェイコムとは無関係)に転職し取締役などの職に就き、その後独立し(株)識学を設立、現在その社長を務める。

以上の大半の情報は本書の著者プロフィールに書かれているが、識学という会社のこと自体はほぼ何も書かれていない。

そこで、どんな会社かよく分からなかったのでHPで調べてみたところ、経営コンサルティングや社員向け研修などを行っている会社のようだ。

さて、それで本書の中身。

感想を一言で言うと、「数値化」というキーワードをタイトルに掲げながら、意外と数字の話しが出てこない、ということ。

例えば、「PDCA」はよく言われる言葉だが、このPDCAの「D」、つまり計画に基づく行動のことだが、営業が成果を上げるためには「D」をひたすら増やすことが重要という。

これって、言い方を少しスマートにしているだけで、昭和に跋扈していた、ド根性営業と実質的に変わらない。

確かに、著者の経歴をネットで見てみると、早稲田では体育会ラグビー部に所属していたようで、その気質が抜けないのかもしれない。

そしてよく考えれば、タイトルの「鬼」という言葉にもその思想が表われている(とはいえ、著者の名誉のために言っておくと、体育会ラグビー部といっても、著者は大阪の名門府立北野高校から一般受験で早稲田に入っているので、ラグビー一辺倒の人ではないと思われる)。

また、本書では「変数」という著者独自の言葉が頻繁に出てくるが、要は、この変数とは、自分では変更できないことで、かつ、仕事の成果につながる重要な事柄のこと。

計算式で表すと、y=ax+bの「x」が変数で、「a」や「b」は定数。

この自分では変えられないコト(「定数」)と自分で変えるコトのできるコト(「変数」)を区別することは重要だと思うが、残念なのは、この「変数」という概念が本書の記述だけでは分かりにくく、本書で出てくる別概念の「KPI」との違いがよく分からないところだ。

ちなみに、KPIとは”Key Performance Indicator"の略で、著者の定義では、「目標のための目標(目標に最も貢献する行動)」とされるが、こうなると、「変数」と何が違うのか?

色々具体例などを示しながら説明されるものの、この一番キモと思われるところが腑に落ちないので、本書はイマイチの評価とせざるを得ない。

このように、本書では、何か一見新しいコトを言っているようで、実は大して新鮮味がなく、肝心な所が分かりにくかったりと、それらの点でも期待していたものとは違った。

また、本書の前半部分は、主に会社の一プレーヤー目線で数値化の必要性が説かれていたのに、途中から経営者や管理者目線に視点が変わり、数値化の話しもあまり出てこなくなり、一貫性にも欠ける。

よって、星2つとさせていただいた。

2024年2月23日

読書状況 読み終わった [2024年2月22日]
カテゴリ ビジネス

大手生保と保険代理店で15年のキャリアを積んだ、保険のプロによる書。

本書のタイトルを見れば分かるとおり、著者は保険のプロでありながら、基本的に保険には入らない方がいいとうスタンス。

それは、民間の医療保険や死亡保険というのは、「6万円弱の給付金を受け取る権利を、10万円の保険料を払って買う」ような構造だから。
これは、保険会社の粗利率(保険加入者から集めた保険料のうち会社に残るお金の割合)が43~46%(2019年度から2022年度)というところから来ている。
要は、支払った保険料の半分近くが保険会社の取り分になっているのだ。

では、著者は全ての保険を否定しているのかというと、あながちそうともいえない。

著者は、加入すべき保険は1種類、それは「収入保障保険」。
これは、自立していない子どもがいる世帯主が、期間限定で死亡に備える保険。

この究極的な答えが「はじめに」にいきなり書かれていることには驚いた。

そして無駄な保険を解約したことで得た解約返戻金を減資に他の有料は保険や新NISAやiDeCoに投資することをすすめる。

では本書の中身をみてみよう。

40歳の五十嵐家(会社員のご主人、パートタイマーの奥様に4歳のこどもの3人家族)が著者に保険の相談をするという形で対談形式で話しが進んでいく。

五十嵐家が契約している保険は下記のとおり(為替相場は2024年2月16日現在の1ドル150円として計算)。

①米ドル建て終身保険
保険金額 死亡時15万ドル(夫死亡時2,250千万円)
保険料 月337.76ドル(50,664円)※46歳まで支払

②収入保障保険
保険金額 死亡時から月額25万円(夫死亡時から65歳まで)
保険料 月9,416円(60歳まで支払)

③学資保険
保険金額(満期金額) 200万円
保険料 月9,399円(子どもが17歳、夫が53歳まで支払)

④終身医療保険
保険金額 入院日額1万円ほか(夫)
保険料 月7,869円(55歳まで支払、保障は一生涯)

⑤終身医療保険
保険金額 入院日額1万円ほか(妻)
保険料 月7,476円(55歳まで支払、保障は一生涯)

上記保険の月額保険料は84,824円、年額1,017,888円とかなり高額。

そしてこれらの保険、前述のとおり、ほぼすべて著者によってぶった切りで、②収入保障保険以外解約することを勧められる。

②以外の保険はどこがダメなのかは、本書に当たっていただきたいが、著者が保険で備えるのに向くことの条件は下記の通り。
1.「めったに起きないこと」
2.「自己資金では対応できない大金が必要になること
3.「いつ起こるか分からないコト」

その理由は、頻繁に起きることに保険で備えてしまうと、保険料が高くなる。
これは保険会社の立場に立って考えれば分かりやすい。

これに該当するのが④・⑤の医療保険。
しかも医療保険の保障内容(給付金)は、高額になりにくい。

例えば、入院給付金の平均は1件当たり約9万3,000円、手術給付金は9.5万円ほど。

また、手術代が100万円など高額になった場合は、国の医療保険(健康保険や国民健康保険)の高額療養費制度により、五十嵐家の場合、年収約370~770万円なので、100万円の負担が1ヶ月8万7,430円で済んでしまう。

逆に、②の保険は、どこがよいのか?
この保険の特徴は下記の通り。

1)世帯主の死亡に備える「死亡保険」(失業保険ではない)
2)65歳までに死亡した場合、その後毎月25万円受け取れる
 ・保障は一生涯続かない
 ・保証金額が徐々に減っていく※
3)掛け捨て保険(=解...

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2024年2月18日

読書状況 読み終わった [2024年2月18日]
カテゴリ 保険

内田樹氏とイスラーム学者の中田考氏(イブン・ハルドゥーン大学客員教授)、その弟子の山本直樹氏(トルコ国立マルマラ大学大学院トルコ学研究科助教)の3氏による対談をまとめたもの。

テーマはタイトルからはすぐには分かりにくいが、ずばりイスラーム教(またはイスラーム学)とトルコ。
「帝国」とはトルコ(かつてのオスマントルコ帝国になぞらえて)のこと。

内容的には、イスラームの教え(イスラム教・イスラム学)が如何に深いものであるか、またトルコのエルドアン政権がイスラム的思想へ回帰し、今日の困難な国際情勢の中でしたたかに立ち回っていることを礼賛する内容。

ベースにイスラーム学者2氏の反欧米的思想があり、一部それが過ぎるところには辟易したが、概ね本書での対談は興味深いものが多かった。

面白かったのは、私が学生時代に、とあるパーティーに参加した際、イスラム教徒のパキスタン人と話しをした時の印象深いエピソードを想起させたこと。

そのパーティーには酒が供されていたのだが、そのパキスタン人も酒を呑んでいた。
私は世界史の授業でイスラム教では飲酒は禁止されていることを知っていたため、戒律に違反しないのか彼に問うた。

すると彼は、「アッラーは酒を呑むこと自体を否定しているのではなく、酔った状態になることを禁止しているのだ」と答えた。

当時、これは彼なりのギャグの一種かと半分笑いながら聞き流したのだが、本書で山本氏が、「酒を呑んではいけないという「ハラーム(禁忌)」があるが、これは、イスラム法学上の定義としては、上(天)と下(地)の区別がつかないほどベロベロに酔った状態(酩酊)を指す」といい、前述のパキスタン人と全く同じことをいっているのには驚いた。

山本氏は現在もトルコに住んでいるため、トルコについて色々とリアルな情報を持っているところが面白い。

また、本書の後半は日本再生のために今からできることが議論の対象となるが、その中で司馬史観がやり玉に挙げられている点が面白い。

司馬史観とは、日露戦争から敗戦までのおよそ40年間を「のけて」、まだ帝国主義国家になる以前の明治の日本と、戦後の民主日本を「つないで」、そこに日本の民族的な伝統の一貫性を見いだそうとする考え方。

そして、そうやって「のけた」40年こそ日本が中国大陸、朝鮮半島ともっとも深い関わりを持っていた時期であったが、にもかかわらず、都合の悪い歴史は「なかったこと」にしてしまった結果、歴史が途絶してしまった、それが今日のギクシャクした日中・日韓関係につながっているのだ。

内田氏は、「どの国にも「恥ずべき過去」はあります。でも、それを認めるか認めないかで、そこから後の国民たちの倫理的な緊張感は変わります。「疚しさ(やましさ)」を抱えて生きることは、辛いことですけれども、それが民族差別や排外主義を抑制してもいる。歴史修正主義者は、国民をこの「疚しさ」から解き放つことで、民族差別や排外主義といった暴力を解き放ってしまう」と喝破する。

また、巻末の中田考氏による「エピローグⅠ トルコに学ぶ新しい帝国日本の転生」は、短いながらも日本の歴史を「帝国」という切り口で振り返る論考で、興味深い内容。

なお、ここで「帝国」といっているのは、帝国主義などの帝国ではなく、「多様な集団の共存の政治システム」を指す。

日本にそんな時代があったのかと不思議に思えるが、中田氏曰く、飛鳥時代から明治初期まで地方豪族の領地を「くに」とする律令制が敷かれていた。

つまり、かつての日本は自立的な国々を穏やかに束ねる帝国であり、そこには多様性がみとめられていたと言い、今こそこの多様性の再生が必要と説く。

また、同じく巻末の山本氏の論考では、日本のアニメが...

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2024年2月18日

読書状況 読み終わった [2024年2月18日]
カテゴリ 国際情勢
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