日本映画史100年 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2000年3月17日発売)
3.53
  • (7)
  • (12)
  • (30)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 185
感想 : 14
5

この本については、2007年3月18日に登場させておきながらついに今まで何も書かずじまいだったことを、ほんの先ほど気がつきました。

もちろん、四方田犬彦教授の愛弟子を自称する私のことですから、すでに本書を空で話せるほど読み込んでいて、教授の海外講演などの留守の際には代わって講義できるくらいにしてあります。

この本は、今まで日本映画を概観する書物すらないという情況に業を煮やして、彼が精魂込めて書きおろしたこの百年間の日本映画の歴史が総網羅されています。

一読すればすぐわかりますが、単なる映画の歴史というだけではなく、ここには優れてこの百年の文化・思想・世相・政治・風俗が十二分に分析されていて、おそらく他の誰も真似のできない独創的な書物になっています。

ところで実は今回、愛読する「web週刊読書人」の7月23日号の編集者コラム「風来」で・・・・・、

「文化資源学会主催の研究会で、大島渚監督『日本映画の百年』を見る

▼リュミエール兄弟が映画を発明して百年の年にあたる1995年、英国映画協会が世界各国の代表的な映画監督に依頼し、それぞれの国の映画の百年の歴史を52分間の映画にまとめる企画をした

▼フランスはジャン=リュック・ゴダール(アンヌ=マリー・ミエヴィルとの共同監督)、日本では大島渚が選ばれ、大島作品はテレビ朝日で、95年に一度だけ放映されている。その後、DVD化されることはなかった(一時期ニコニコ動画にアップされていたが、現在は閲覧不可)。スチール写真だけの紹介が120タイトル、映像作品は26本。「日本の映画の歴史であり、日本の現代史を描きたかった」(大島)という

▼冒頭は、伊藤大輔『忠治旅日記』にはじまる。1927年製作の無声映画。断片フィルムしか残されておらず、90年代初頭までは、「幻の名作」とされてきた

▼他のムービー作品を紹介する。山中貞雄『人情紙風船』山本嘉次郎『ハワイ・マレー沖海戦』稲垣浩『無法松の一生』黒澤明『わが青春に悔なし』小津安二郎『早春』大島渚『儀式』今村昌平『日本昆虫記』寺山修司『書を捨て町へ出よう』小川伸介『日本解放戦線 三里塚』土本典昭『パルチザン前史』深作欣二『仁義なき戦い』山田洋次『男はつらいよ』森田芳光『家族ゲーム』相米慎二『台風クラブ』松岡錠司『きらきらひかる』北野武『ソナチネ』崔洋一『月はどっちに出ている』。最後はマキノ雅弘『地雷也』におわる

▼字数が尽きてしまいました。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…。」

という文章に出会って、はたと思い当たったのでした。

そうです、なんとその16年前のTV放送を、中学生の私は前編ビデオテープに録画していたのを思い出したのでした。

それがこのところ、3,000本以上になるVHSもほとんど見る機会もないので、時折思い出したようにテープを引きちぎってゴミとして出していましたので、もしかしてと血相を変えたのです。

もうないかもしれないと慌てて探したら、ありました、ちゃんと捨ててはいけない保存用という箱に入れてとってありました。

大急ぎでこの貴重な映像を、すべてDVDとブルーレイにしたのはいうまでもありません。

ここには、四方田犬彦に先んじること5年も前に、映画監督・映画人としてではありますが、大島渚が心と思想を込めて、映画誕生100年を記念して日本映画について熱く語っている声と姿が映っています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画・ドラマ
感想投稿日 : 2011年8月1日
読了日 : 2011年8月1日
本棚登録日 : 2011年8月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする