死刑の理由 (新潮文庫 い 67-1)

著者 :
  • 新潮社 (2003年8月1日発売)
3.62
  • (3)
  • (8)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 99
感想 : 13
5

誰もが当然、極刑=死刑判決が出るものだと思っていた裁判員裁判が、まったく予想外のかたちで判決が下されました。

去年8月3日午前8時52分ころ、ナイフで刺されて1ヶ月後に亡くなった江尻美保さん(当時23歳)と、ハンマーで数回殴られ首などを数回刺されて殺害された祖母の鈴木芳江さん(当時78歳)の無念は、果たされませんでした。

極悪非道の凶悪犯人=林貢二(42歳)が無期懲役の判決を受けました。断固、許せません!

この本は、今まで実際に死刑判決を受けた43件の事例を、判決書を元に詳細にわたる犯罪事実と一審・控訴審・上告審のそれぞれの判断理由をコンパクトにしてあり分かり易く読むことが出来る本です。

どれもみな犯人は、死刑になって当然のことをした輩ばかりで、ここに登場する奴等と、今度の林貢二の違いは何もありません。

犯行時にうつ状態だった、とか、祖母の殺害に計画性がなかった、とか、初犯だ、とか、反省している、などといった理由でよくも無期懲役にできたものです。

こんな理由なら何の罪もない人を無理やり殺してもいいのか、ば、馬鹿野郎~!

百歩譲って、林貢二が無期懲役の毎日を、江尻美保さんと鈴木芳江さんのズタズタに残虐に殺された写真で埋め尽くされた独房で暮らさせて、平日一般面会可能にして、全国からやってきた心ある人たちの放つ「人殺し!鬼畜生!」「よくも無抵抗な、か弱い女性をふたりも殺して、のうのうと平気で生きていられるな」などという非難ごうごうを浴びせかけられたり、凶悪犯は一日一食、寒さ暑さも関係なし常に薄い囚人服一枚きりなどなど、ともかく囚人として物心両面で自覚せざるをえない、罪を悔いるように仕向けるシステムが完璧に整備されているならまだしも、そうではなく、ぬくぬくと三食昼寝つき冷暖房完備の快適永久ライフが約束されている刑務所などに、どうしてのほほんと生きながらえさせてあげる必然性があるのでしょうか!

裁判員制度の弊害が、まさかこんなところで、犯罪者にやさしく甘いという形で現出するとは思ってもみませんでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 死刑
感想投稿日 : 2010年11月2日
読了日 : 2010年11月3日
本棚登録日 : 2010年11月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする