古典落語大系② (静山社文庫)

  • 静山社 (2011年3月7日発売)
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感想 : 1
5

もちろん落語の真髄は、落語家を目の当たりにして、目で見て耳で聞くというのが正統派で、これに勝るものはありませんが、ときには外出時にウォークマンを通してイヤホーンで聞くとか、こうして活字で読むというのがまた、粋というか、別の違った趣があっていいものです。

あれ、ここいらへんの言い回しは円生っぽいなとか、おっ、この描写はまるで春団治だ、などというふうな、こちらの知ったかぶりをくすぐる活字上の工夫(?)もまた楽しからずやというところです。

ですが、くれぐれも外で落語を聞くときは、まわりの情況をよく確かめて聞くようにしないといけません。

私の赤面の例を告白しますと、公園を通りかかったときに聞いていた志ん朝の、そう、あれは確か『蛇含草』だったかな、ぷっ、と吹き出してしまって、顔もにやけていて口を開けて笑ってしまっていたのですが、その時ちょうど運悪く、見える範囲にあるベンチでたむろしていたチンピラ風のお兄さん方3人が、何を勘違いしたのか、自分たちが笑われたとでも思ったのでしょう、オイ、なめんじゃねえぞ、この野郎、などと口角泡を飛ばして、か弱き乙女の私に襲いかかってきました。

ボーイッシュにしていたので、遠目からは男性と見間違ったのでしょうが、真近にきて女性だとわかってからは別の興味の対象に変わったらしく、急にやさしい口ぶりでニヤニヤして触ろうとし始めました。

私が、キッと睨んで眼光鋭く威圧的な態度をとるやいなや、お兄さんたちは豹変して、はがいじめにしようとしたりなぐり飛ばそうとしたり、文字通り本当に襲って来たのでした。

よせばいいのに、ちょうど運動不足の身体を持てあましていた私は、ほんの軽いフットワークのつもりで、私より背の高い最初の一人は力道山ゆずり(?)の空手チョップで制御しアッパーカットで倒してから、次の筋肉質の頑強そうなもうひとりは、足蹴りと回し蹴りで地面に伏させ、トリの知的なインテリやくざ風の御仁には、合気道の投げ技で投げ飛ばした後にすぐ、いいかげん飽きてきたのとこれ以上面倒なことになったら嫌だったので、一目散に走ってその場を立ち去りました。

たぶん、彼らが私を女だと思って油断したからなんとかなったのでしょうが、ヒヤヒヤ・ドキドキもので、本当とても怖かったわ・・・。

ということで、つくづく外で落語を聞くときは、その笑いが、まわりの人に誤解されないように聞かなければ、とんだ破目になるという笑例でした。

ええっと、この本は著者の中に亡き江國滋はじめ、大西信行・矢野誠・亡き三田純市という、私のあこがれの≪東京やなぎ句会≫のメンバーの名前が連ねてあるので手にしたものです。

たぶんこの本の元本は、図書館で読んだことがある、1973年から1979年にかけて刊行された三一書房版の『古典落語大系 全8巻』だと思いますが、元々の26編がこの文庫では19編になっていますけれど、「時そば」や「三枚起請」などもっともポピュラーな題目が並んでいて楽しめます。

あっ、それから、ふつうに目で読むだけでなく、ときには口に出して、自分で演じてみるのもおつなものです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 落語・芸能
感想投稿日 : 2011年3月5日
読了日 : 2011年3月8日
本棚登録日 : 2011年3月5日

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