天皇と日本の起源 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2003年2月18日発売)
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4

2010年、奈良を訪ねた。
世間が平城京遷都1300年に沸いているとき、奈良まで行って平城京には寄らず、飛鳥斑鳩だけを周ってきた。
けれど、飛鳥がこんなに国家形成の上で重要ポイントだったとは、その時は知らなかった。

一般的には、飛鳥時代というのは推古天皇の592年から、持統天皇が藤原京に遷る694年の、およそ100年間のことを言うらしいけど、厳密に言うと推古天皇の宮は飛鳥という地域から少し離れていたらしい。

が、まあ、推古天皇の頃からということにしておこう。
敏達天皇の後を継いだ用明天皇がすぐに亡くなり、その後の崇峻天皇は蘇我馬子に暗殺されて、次の男性天皇が現れるまでのつなぎとしての女性天皇が推古天皇、と学生時代習った。
数少ない女性天皇はすべて、ワンポイントの中継ぎだ、と。

しかし、推古天皇はタフだった。
蘇我氏を後ろ盾に、仏教(寺院建立)によって、大王の威光を示した。
「聖徳太子は実在しなかった」という説が最近出てきているようだけど、この本によると厩戸皇子は主に外交を担当していたという。

聖徳太子といえば17条の憲法や、冠位十二階などを制定したことになっているので、内政にももちろん参画していたのだろうけれど、彼の住む斑鳩は、飛鳥と難波をつなぐ交通の要所だったというのだ。
なるほど。
隋に国書を送ったことは有名だが、それだけではなく朝鮮半島や中国本土との人事交流はあったのだろうから、そうすると難波と行き来のしやすい斑鳩は、外交官厩戸の居住地としては適切だろう。

推古天皇が中継ぎではなかった証拠に、厩戸は推古天皇をサポートしながら、ついに自ら即位することはなかった。
先に死んじゃったしね。

さて、推古天皇の後を継ぐのが、孫の舒明天皇。
彼は、推古天皇が長い年月をかけて作り上げた飛鳥を棄てて、百済の地に(奈良県だよ)新しく都を造るのだが、いろいろあって挫折&薨去。
舒明天皇の奥さんが皇極天皇となったとき、彼女は夫の宿願であった百済の都をさくっと棄てて飛鳥に戻る。
やっぱり大王の権威は飛鳥あってのことなのよ、と思ったかどうかは定かではないが、この後彼女は飛鳥の地に宮や寺院を造って造って造り倒す。

話は少し戻るけれど、推古天皇の跡継ぎは二人考えられた。
孫の田村皇子(舒明天皇)と、厩戸皇子の息子である山背大兄皇子。
父の人気もあって、山背大兄は自分が跡継ぎにふさわしいと思っていた節があったらしいけれど、田村皇子の方が年齢が上で、なおかつ山背大兄は性格的にまだ未熟と思われていたらしい。
推古天皇は死の間際に二人をそれぞれ呼び、後事を託した。
そして蘇我蝦夷にも。

ところが舒明天皇の後を継いだのが妻の皇極天皇。
「え?次は俺じゃないの?」
面白くないのは山背大兄。
放っておくと内紛のもとになる。父の七光りで人気はあるから。
というので、蝦夷がまず天皇の意向を伝えるが、いうことを聞かない(っぽい)ので、蝦夷の息子の入鹿が成敗する。もちろん天皇の御意志のたまものだ。

そうでしょう。そうでしょう。
入鹿と山背大兄はいとこ同士。なのになぜ入鹿は山背大兄を殺したのか。
そしてそれを、蝦夷はどう感じていたか。
これがずっと気になっていたのだけど、天皇の意向を汲んでということなら納得。
私の知っている蝦夷なら、そうするはずだよ。うん。うん。

天皇の意向を汲んでことに及んだ入鹿が、今度は中大兄に殺される。
なぜか。
皇極天皇が即位した時点で皇太子は古人大兄皇子(舒明天皇の息子だが、皇極天皇の息子ではない)ということになっていたのだが、皇極天皇の弟である軽皇子に跡を継がせることにしたときに、邪魔になった古人大兄の後見である蘇我氏を排除することによって、古人大兄を切り捨てた。
手を下したのは中大兄だが、黒幕は皇極天皇。
なるほど、大物は自ら汚れ仕事をしないものだよね。
というわけで、入鹿は殺され、古人大兄は仏門に入り、蝦夷は自殺する。
そうそう。蝦夷って詰めが甘いんだよね。

この後皇極天皇はその位を弟である軽皇子改め孝徳天皇に譲り、政治は彼にお任せ。
自分は飛鳥の町づくりに専念する。
孝謙天皇は難波で組織改編など、新しい国の在り方を実現するが、道筋が見えてきた段階で、皇位を姉に取り戻される。
かくて孝徳天皇のあとは再び皇極改め斉明天皇が国を治めることになる。

その後斉明天皇→天智天皇→天武天皇→持統天皇と続くのだけど、皇極・斉明天皇の無慈悲っぷりでお腹いっぱい。
彼女は皇位を約束しておきながら都合が悪くなると簡単に切り捨てる。
山背大兄、古人大兄、孝徳天皇。
怖いですね~。
歴史の授業ではほとんど触れられない地味な天皇だったのに、わからないものですなあ。

さて、やけに蘇我蝦夷にだけ思い入れがこもっていますが、それはやっぱり『日出処の天子』にどっぷりつかった学生時代のたまものです。
また読みたいなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年6月14日
読了日 : 2018年6月14日
本棚登録日 : 2018年6月14日

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