『一路』というタイトルは、主人公・小野寺一路の名前と、参勤交代を差配して中山道を行く行程に掛けてある。
参勤交代の意味って、大名の財産を使わせて、反旗を翻すことのないように、ということだと思っていたけれど、この作品の中では違う。
「いざ、鎌倉」のように、いったんことがあった時に江戸に馳せ参じることができるように、軍事訓練としての行軍であると。
250年も過ぎて形骸化してしまった大名行列を、家伝の「元和辛酉歳蒔坂左京太夫様行軍録」のとおりに行わなければならなかった小野寺一路の事情とは。
不幸の上に不幸と不幸が襲う一路。
さらに本人の知らなかった不幸が次々明かされ…。
文武に秀でているとはいえ、参勤交代など初めての一路が御供頭としてそれを差配しなければならない。
唯一の部下もまた、初めての参勤交代。
お殿様は余りにも善人であり、自分の周囲でお家騒動が持ち上がっていることに気がつかない。
参勤交代で不始末を仕出かしてしまえば、一路が切腹してお家断絶するだけではなく、お殿様にもその火の粉が降りかかることになる。
という、がけっぷち道中でありながら、ちゃんとした道中記になっていて、さらにはぷっと噴いてしまう愉快なやりとりがあり、家臣たちの矜持が熱く、めっぽう面白くってならない。
流れ的にはハッピーエンドで終わると思うんだけど、この騒動がどう着地するのか、続きがとても楽しみ。
早く図書館に行けるようになるといいのに。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年5月16日
- 読了日 : 2021年5月16日
- 本棚登録日 : 2021年5月16日
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