中国の神話 改版 (中公文庫 し 20-10 BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社 (2003年1月25日発売)
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感想 : 7
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タイトルが内容をうまく表していません。
私は中国の「神話」の本だと思って読み始めたのですが、「中国の神」話が正しい。

結構世界各地の神話を読んでいるのですが、中国の神話って確かに聞いた覚えがない。
中国にいるのは神様ではなく仙人だから。
と思っていたのです。ずっと。
ところが中国の「神話」の本がある。

神話というからには多神教なのでしょう。
どんな物語があるんだろう。わくわく。

漢字漢字漢字漢宇漢字漢字勤字漢字漢字漢字……(中に二つ間違いがあります。気がついたかな?)

襲いかかる漢字の波を払いのけてようやく理解したところによると、この本の前半部分は中国の文献を読み解き先史時代を炙り出したのち、日本の先史時代について記されている…っぽい。
古代日本の〈神話時代の〉風習が、漢字を成り立ちを分析することによって明らかにされていく。

それ自体は素晴らしい研究だと思うのですが、これは神話の本では?と思いつつ読み進めていくと、中国もやはり国造りから始まる神話が、古代の帝の血筋へと続いていくらしい。

しかし中国って、大昔からいろいろな民族が土地を奪ったり奪われたりしながら国を作ってきたわけで、いくつもの系統の国や地域が複雑に絡み合っているのである。
負けた部族〈氏族、姓〉が信じる神は、悪神に変えられたり、存在を抹消される。
しかし勝った方も、次もまた勝つという保障はなく。
そうやって神々は変貌を遂げていく。

“天下的世界観のなかで成立した神話の体系は、すでに神話の原生的な基盤をはなれ、抽象化したものにすぎない。中国の神話は、こうしてその政治的な道統感のうちに自己を解消し、むしろ儒家的経典のうちに、新しい伝統をもつのである。これが中国を神話なき国とし、神話的に不毛の地とし、その神話を「枯れたる神話」とする理由であった。”

物語としての神話は枯れている。
そして、神は何も語らない。

“神々の言葉は何も残されておらず、事件としてそのことが記されているのみである。そこにはロゴスの世界がない。また神々は人間的に行動することもなく、著しく非人間的である。”
非人間だもの   まぴを

“ここに再構成を試みた中国の神話は、わが国の神話とはなはだしく異質のものである。しかしその異質性のうちに、むしろ民族固有の様式を求めることができよう。またその異質性は、神話の展開の上にみられることであって、神話の形成過程には、東アジア世界の原質としてとらえうる、多くの類同性を指摘することができる。”

中国の神さまを知らん、と最初に書きましたが、「封神演義」は読んでいるの。
そのうえで、神様じゃなくて仙人の国だと思っていたんだよね。
この本では西王母は神様ということになっているけれど、普通は仙女の大元締めみたいな書き方をされていると思う。

時々人間から神様になっちゃうこともあるけれど(菅原道真とか)、たいてい神様は生まれついての神様で、修業をした人間がなるのが仙人だと思うんだけど、どうも中国は神様と仙人の境があいまいなのではないかと思うのだ。
結局自信をもって言えるようなことが何ひとつ書けないくらい難しい本だったということだけ断言しておきます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年3月2日
読了日 : 2017年3月2日
本棚登録日 : 2017年3月2日

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