最初から、最後は破滅で終わるのだろうと思っていた。
だってこれ、実話をもとにしているのだもの。
怪盗ルパンや二十面相とは違う。
犯罪者をヒーローにするわけにはいかない。
だけど、彼らは本当に成功し続けた強盗だったのか?
確かに警察に尻尾は掴ませなかったが、いつも目標を下回る金額しか奪うことができなかった。
そのことについてレオは一度でも考えたことがあるのだろうか。
そしてレオは、家族は一致団結するのが当然と考えていたけれど、レオと弟たちは団結していたが、最初から一致なんてしていなかった。
レオにはそれが見えていなかった。
フェリックスが言ったとおり、彼らを統率するのが父親から長兄に代わっただけだったのだ。
どちらもフェリックスやヴィンセントの気持を考えるなんてことはなかった。
ただ黙って俺について来ればいい。
フェリックス21歳、ヴィンセント17歳。
ようやく自分たちの気持をレオに伝えて、彼らは袂を分かつ。
だけどレオはもう後戻りできなかった。
強盗することで得られる成功体験の依存症になってしまったと言ってもいい。
どう考えてもレベルの下がったチームで大仕事をやろうとしていたのだから、全く正気ではありえない。
レオは暴力を振るわないことを自分に課し、仲間に課し、それが守られることで自分を正当化していたけれど、銃を突き付けられた人は、命の恐怖にさらされた人は、決して消えない傷を心のうちに負ってしまったことにレオは気づくことができなかった。
なぜならレオにもその傷があり、その傷を見ないことでレオはかろうじて自分を支えてきたのだから。
父のイヴァンが自分の気持ちのままに暴力を振るって家族を従えてきたことが、結局家族の心を壊してきたのだ。
イヴァンがレオに「家族を頼んだ」ことが、レオの人生を狂わせてしまった。
たった10歳の子どもがどうやって家族を守ることができるのか。
父のとおりにふるまうしかないではないか。反面教師だとしても。
作者の一人、ステファン・トゥンベリは強盗に参加しなかった彼らの実の兄弟だという。
本当は4人兄弟だったのだそうだ。
レオはこの本を読んで自分や周りの人たちをどんな狂気にさらしていたか、これで理解できた」と語った。
自分を客観的に見ることができるようになったのなら幸いだと思う。
- 感想投稿日 : 2022年2月12日
- 読了日 : 2022年2月12日
- 本棚登録日 : 2022年2月12日
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