目次
・サイドカーに犬
・猛スピードで母は
「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」のどちらも、子どもの日常が子どもの目線で書かれているのだが、そのどちらもが親との精神的距離がある。
親を嫌いなわけではない。
親も、子どもを嫌いなわけではない。
ただ、子どもの他にいろいろとあるのだ。好きなこと、やらなきゃならないこと。
子どもはそれを知っているから、いつか、親に捨てられるかもしれないことを心のどこかで知っている。
それは特に寂しいことではない、とも思っている。
結局捨てられることはないのだけれど。
どちらの作品も主人公の心は終始フラットで、時々不安に駆られることはあっても、大笑いしたり激怒したり泣きわめいたりはしない。
無口ではあるけれど、心の中ではいろんなことを考えている彼らは、自分の感情くらい理屈で納得させることができるのだ。
ああ、それはまさに、子ども時代の私のようで。
無口でぼうっとしていた私は、子どもらしくないと言われ、しっかりしろと言われたけれど、心の中では自分の考えをはっきりと表明できる人に憧れた。
それは「サイドカーに犬」の洋子さんであり、「猛スピードで母は」の母だ。
それにしても母たちよ、子どもを簡単に捨てるな。
捨てるなら、その後の生活の保証をしてからにしろ。
捨てられたと思わせるな。
と、読みながら思う。
私は物理的に母に捨てられたことはないけれど、母がもう少しアクティブな性格だったら、きっと捨てられていただろうな。
そして私は、それを淋しく思わなかっただろう。
厄介なことになった、とは思うだろうけれど。
そんなことを考えながら読んだので、読後切なくなってしまったのだ。
- 感想投稿日 : 2021年11月27日
- 読了日 : 2021年11月27日
- 本棚登録日 : 2021年11月27日
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