ぶたぶたカフェ (光文社文庫 や 24-11)

著者 :
  • 光文社 (2012年7月12日発売)
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母一人子一人で育った泰隆は、母の再婚を機に会社を辞める。
我がままな夫に振り回された結果の母の離婚を、当時小学生だった泰隆は当然と受け止め、これ以上母に心労を与えないために自分ができること=いい子になった。
勉強はやれば結果を出すことができた。
足は速かったので、陸上部に所属した。
クラス委員やイベントの実行委員に立候補しては、卒なくこなした。
いい大学に行き、いい会社に入った。
何の問題もないはずだった。

だけど、本当の自分はどこにいるのだろう?と思った。
やりたいことがわからなかった。
朝、起きられなくなった。
でも母の期待を裏切ることはできなかった。

で、母の再婚をきっかけに会社を辞め、行きがかりで大学の先輩がやっているバーを手伝うことになった。
そこでは朝から午後2時まで朝食専門カフェを違う人が営業していて、夜からは泰隆が手伝うバーになるのだが、カフェを営んでいたのがぬいぐるみのブタ。

大学の先輩夫婦といい、カフェの店長ぶたぶたさんといい、常連の見上さんといい、適度に距離を置きながら泰隆のことを見ていてくれるのは、読者としては安心材料。
だからこそ、母親が真相を知った時の取り乱しようにぎょっとしたのだけれど。
「お母さんもよく頼んであげるから、会社に戻りなさい!」
それを言っちゃあおしまいよ。

親も子も互いを思うのはごく自然な感情で、それを変に気を回すから自責感に苛まれてしまう。
親のため、子どものためと言え、自分で考えて行った行為を、その相手が負担に感じる必要なんてない。
お互いさまなのだ。

見上さんの日常を垣間見るに、一条ゆかりのエッセイみたいだなあと思ったけれど、部屋を見たらマンガ家じゃないことはすぐにわかった。
ということは…大した謎じゃないんだな。

ひとつ、泰隆視点で書かれたり三人称で書かれたりが煩雑で、大学の先輩に対して綿貫とか、「見上さん」と言いながら遥はと書いてあったりするのにいちいちひっかかってしまう。
視点は統一してほしかったな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年10月9日
読了日 : 2022年10月9日
本棚登録日 : 2022年10月9日

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