お言葉ですが…〈別巻6〉司馬さんの見た中国

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  • 連合出版 (2014年6月1日発売)
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感想 : 3
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司馬遼太郎といえば、日本の歴史小説の第一人者。
しかし中国の歴史についても、正しい視点で捉えていると、著者は言う。

“しかし、戦国時代以降は、儒教に縛られて、豊かだった中国の思想が、逆三角形のようにすぼんでいってしまうと、司馬さんは考えていた”と、宮城谷昌光は書いている。
その、「逆三角形のようにすぼんだ」という言い回しが、目に見えるようでうまい言いかただと褒める。

江戸時代、幕府が学問と認めていたのは儒教であるが、それはあくまで教養ということでしかなく、生活に入り込んでくることはなかった。
儒教を「バカな体制」と切り捨てる司馬さんを、それは正しいと著者はいうのだ。

そもそも先に書いた『戦国時代』とは、中国の戦国時代で、紀元前の人が言ったとかやったとかの眉唾物の話に縛られるのは、バカらしい以外の何物でもない。
今、目の前にある現実を見ないで、古典を覚えることに汲々とする。
そりゃあ、思想もすぼむわ。

日本が言う「天下」は、あくまでも日本国内のこと。
中国が言う「天下」は、文字通り世界全体のこと。

中国の皇帝は権力を持つ存在。
日本の天皇は最初から、権力ではなく権威。

ふむふむ、わかりやすい比較です。
ありがとう司馬さん。

中華民国が大陸にあったのはごく短い時間だけど、その頃を書いた小説をいくつか紹介。
小説は「何を」書くかではなく、「どう」書くのかが大事という著者は、大陸にあった中華民国で生きる庶民の生活を、いま目にしているように生き生きと描写する汪曾祺(ワンゾンチー)のことを、今の中国で一番好きな作家だと答えるのだそうだ。躊躇なく。
読んでみたいなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月28日
読了日 : 2017年6月28日
本棚登録日 : 2017年6月28日

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