五重塔 (岩波文庫 緑 12-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1994年12月16日発売)
3.73
  • (80)
  • (90)
  • (131)
  • (12)
  • (3)
本棚登録 : 1230
感想 : 145
3

横山操が書いた「塔」は、谷中「天王寺」のやけ倒れる五重塔を、勇猛な姿として書いた。
僕はその絵をテレビで見たあと、実際に谷中まで出かけた事がある。
もうそこには五重塔はないなと思いながら、歩いていると、その静かなお寺に黙る大仏様がにょっきりお寺顔を出してびっくりした、

上野の山からも近く、昔は人の行き交う一角だろうと思わせるこの界隈に昔は立派な五重塔が立っていたのかと、十兵衛の心意気まで残るよう。

十兵衛は生真面目じゃなく愚鈍なのがいい。
口だけで世渡りすることは、毛嫌いする割に人間誰しも大小の処世術を持っている。

愚鈍は愚鈍で遅く考える。
遅く考えるということは、早合点しない。
今いる場所に安住し「自分の人生はこれでいいのだ」と早合点しない。
早く効率的に考える現代は折り合いをつけたもの勝ちと思うというのも早合点。
遅く考え、遅く答え待つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月24日
読了日 : 2023年4月24日
本棚登録日 : 2023年4月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする