戦争の手記は読んでいる間中つらいのだけど、夏になると読まずにはいられません。ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の手記は何冊か読みましたが、一人一人の体験は似ているようでいて全く違っていて、読むたびに人間や運命について深く考えさせられます。
この本は、まず作者の個性が独特です。「せめて一時間だけでも」というタイトルは、「もうダメだと思う状況でも、せめて一時間だけでも、時間を稼ぐべきだ」というポリシーに由来しています。そしてまさにそのポリシーが、作者を助けます。自分自身でも述懐していたように、「戦後、ユダヤ人だと告白しても信じてもらえなかった」そうです。そうなんです。収容所へも行かずドイツ国内で仕事をして暮らして戦争を乗り切っただなんて、私も信じられません。でも本当です。それには、彼に力を貸したドイツ人が何十人といたことがわかります。その事実だけでも、もう少し人間を信じてみようという気になりませんか?
おまけとして、作者の知り合いのラスカー姉妹についての記述が出てくるのですが、この姉妹は別の本「チェロを弾く少女アニタ」で自分自身の体験を語っています。そちらも併せて読んでみると、別の楽しみがあるかと思われます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2012年8月5日
- 読了日 : 2012年8月5日
- 本棚登録日 : 2012年8月5日
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コメント 1件
猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2014/02/27