ランチのアッコちゃん

著者 :
  • 双葉社 (2013年4月17日発売)
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感想 : 1010
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「3時のアッコちゃん」での『アッコさん』のイメージは、『アッコちゃん』ではなく『アッコさん』あるいは『アッコさま』あるいは『アッコ女史』であった。そして、「ランチのアッコちゃん」で、『アッコちゃん』は、『アッコ様』へと私の中のイメージが確定する。

著者の作品を今回、初めて手にとってこのアッコちゃんシリーズで感じたことがある。
軽快な進行と理解しやすい表現、日常生活でが安易に想像できる描写、読者と等身大の登場人物とスパイスとなる人物のテンポのいいやりとり。ごく平凡な題材であって、飾り気がなく共感しやすいということであろう。人それぞれの感じ方があるかと思うが、私はそのように感じた。

「アッコちゃん」シリーズは、『食』、『食べ物』強いて言えば、『身体に優しい食べ物』あるいは『身体を作る食べ物』への理解が根底にある。
以前読んだ本で、人間の体は自分の食べたものでできている。そして、食べたものが結果になって現れるのは3ヶ月後。つまり自分の体調を考えるなら3ヶ月かけて、体を作っていくことを常に考えなくてはならない。そして、食べ方も然りであり。例えば、炭水化物は約8時間、肉などのタンパク質は14時間かかる。夜、8時にご飯を食べて、12時に就寝するとすると、36度の体内で炭水化物を温めていることになる。つまり、体内で食べ物を腐らせていることになる。だから、食べ物の消化時間を見越して食事をしないといけないなどと書かれた本を読んだ。

そこまで徹底することはないとしても、食の好き嫌いなく、身体を作るような食事を摂る。身体を作る食事は身体だけでなく、健全な心も作るということを思い出させてくれた作品であった。
そして、本文では『生き方を変えたいなら食べ物を変えなさい』という言葉で描写されており、身体、心は当たり前で、それは『生き方』にも繋がることであると言われている。

さて、本作は、今回も4つの短編集からなり、短編集ながら繋がりがあるので読みやすい。

第1話 『ランチのアッコちゃん』
「株式会社 雲と木社」の営業部の黒川敦子部長ことアッコさん。45歳、独身。173cmでガッチリした肩幅、つやつやの黒いおかっぱ頭。
営業部の派遣社員澤田三智子と1週間、ランチの交換をする。

第2話 『夜食のアッコちゃん』
前職の「株式会社 雲と木社」が倒産し、新しく大手貿易会社「高潮物産」で、派遣社員として働いていた三智子か、ランチタイムに「東京ポトフ」としてワゴン車での移動販売を開始していたアッコさんと出会う。アッコさんと一緒に働きたいと思っていた三智子は、面接がわりにアッコさんの深夜の仕事を1週間手伝うことになる。

第3話 『夜の大捜査先生』
30歳の契約社員・満島野百合は、合コンに参加していた時、母校の清盟女子学園高等部 現国教師のノゾせんこと前園英作先生と遭遇する。ノゾせんは、清盟女子学園高校の生徒・ハマザキを追いかけていたところであった。

第4話 『ゆとりビアガーデン』
大手総合商社「中村山商事」から派生したベンチャー総合ネット商社「センターヴィレッジ」始まって以来の使えない社員・佐々木玲実であったはずが、実は…

『読むほどに不思議と元気が湧く、新感覚ビタミン小説誕生』とある通り、食べて元気になるように、読んで元気になる小説であった。

暖かくて体に良い食べ物と言って想像すると、「具沢山のスープ」だし、冷たくて体にいい食べ物といえば、「スムージー」を思い出すのが、一般女子だ。
作者がアッコさんの仕事を『東京ポトフ』(後に『東京ポトフ&スムージー』)と設定し、私たちに健康=元気=活力を連想されるところも本作の大きなテーマに沿っていて、実は作品全体の緻密な構成があることが伺える。

追伸: アッコちゃんは『秘密のアッコちゃん』を想像させる意図があった。にしても、アッコさんと働きたいと思うのは三智子だけではない!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月18日
読了日 : 2020年8月18日
本棚登録日 : 2020年8月18日

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