本書が出版されたのは2004年。(手元にあるのは2008年の10刷) 本書の出版当時よりもなおさら「調べる」という作業におけるインターネットの比重が大きくなっていて、それ以外に発想しようがないぐらいにまでなっている人も多いのではないかと思う。
本書は「資料・文献調査」「フィールドワーク+アンケート調査」「まとめかたとプレゼンテーション」という形で、市民が自ら何かを調べる際に取り得る方法の全体像を解説する。
「資料・文献調査」としては例えば雑誌記事や論文、書籍、新聞記事、統計データ、インターネットなどの具体的な調べ方やそれぞれのメリットの解説がなされている。具体的な情報源が示されていたり、練習問題がついていたりとリテラシーを高めるための工夫が織り込まれている点も良いし、実際問題として重要だと感じるのはそれぞれの調べ方に「メリット・デメリット」があることを理解することでしょう。
フィールドワークについてもそうで、アンケート調査がフィールドワークの章の中に含まれているのだが、市民活動団体では気軽にアンケートがなされることが多いが、アンケートは簡単なものではなく、設計を十分にしていないアンケートから導かれる数字は単なる調査もどきにしかならないという点をはっきり指摘します。
ただ、一方でアンケートの効用についても触れている点が良い。アンケートをすることで意見の多様性やポイントに調査者自身が気付くというフィールドワークの一環としての効果があるということ。これは市民活動団体では確かに必要なことだと感じる。ごく少数の当事者に触れることで始まる活動が多く、それ自体は全く間違っていないが、それを社会課題化するアプローチを取るのであれば、それなりの手順をきちんと踏むべきであり、その手順にはそれなりのしんどさもあるけれど、必要なことだと学ぶことのできる一冊です。
2020年10月に岩波新書から『実践 自分で調べる技術』という改訂版?が出ているようなのでそちらも読んでみたい。
- 感想投稿日 : 2020年12月1日
- 読了日 : 2020年11月30日
- 本棚登録日 : 2020年11月30日
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