イヤならやめろ! 新装版: 社員と会社の新しい関係

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  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2013年6月1日発売)
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 キング・オブ・ベンチャーの金言。

 創業からの五十年を通して、人生とは思うようにいかないのが当たり前だということを嫌というほど知らされましたが、それでも挑戦の精神を失わなかったからこそ、今日まで生き残ってこれたのだと信じています。そして、挑戦の原動力となったのは、「生きがい」としての仕事であり、その「働きがい」でした。
 私のような企業の経営者は、自分だけでなく、その企業に関わりのある人々にとって生きがいや働きがいのある職場を作るべく最大の努力をしなければならないと心に誓っています。社是の「おもしろおかしく」は、そうした気持ちから作ったものです。この社是については周りからいろいろと文句も言われましたが、今や多くの方々に認めていただくことができ、本当にうれしく思っています。

「これからの時代、大企業に行って安定した生活を送るのもいいけれども、小さな規模の企業で力いっぱい働いて、自分の能力が即、企業の成績に反映すれば『人間の本懐これに過ぎたるはなし』になる。だから、うちのようなベンチャービジネスの方が面白いに決まっている」というような話をしたのです。昭和三十年ごろです。

・「生産性」の勘違い 好きな仕事をさせてもらえないと嘆くより、仕事を好きな方向に持って行け
 人間の行動力はものすごく幅が広く、同じ人でも、やる気を起こしている時と、そうでない時では全然違うのです。
 例えば、上司から「君、これをしなさい」と言われた通りの仕事をしている場合と、その仕事がやりたかった」という場合では、実測データで三倍とか四倍、能率が違うのです。ですから「おもしろおかしく」仕事をすることは、ただ精神的にいいというだけでなく、会社にとっても、三倍も能率が上がり、三人分の仕事が一人でできるということになるのです。
 それから、おもしろく仕事をしている場合、与えられた仕事を単にやっている場合に比べて、疲労度が二分の一から五分の一ぐらいというデータもあります。労働省は「八時間労働」とか「年間千九百時間」だとかいってますが、これは時間の問題ではない、と私は思うのです。

・サラリーマンにできること 自分が悲劇のヒーローだと思った時、それは敗北を意味する
 …与えられた世界の中でどういう仕掛けをしたら自分がおもしろくなるだろうかを必死に考えるべきでしょう。さらに「自分の部下がどれだけ協力してくれるだろうか」と真剣に考え、動いていけば、自然にみんなも見過ごせない存在になります。その人の能力とか活力があると、だんだん世界が広がってくるわけです。

・トイレの中の閃き 毎日の努力の積み重ね以外に勝利の女神はほほえまない
 発明とかクリエイティブなものは、朝から晩まで考え続けているうち、ある瞬間「アッ、これだ」と思うものなのです。それをいい加減に「五時になったか、帰ろう」とか「朝、眠たいけど、仕方がない、行こうか」では、新しい発想など絶対出てきません。

・わがままを生かす組織 わがままを生かす組織と上司が、「おもしろおかしく」を実現する
 私は、「嫌な仕事をなだめすかしてさせる」のが上司の役割だとは思っていないのです。いかにその人がその仕事に興味を持つようにさせるかについて上司は努力すべきだと思います。嫌な仕事を強引にさせるように命令して、あるいは権力を使って何が何でもやらせると絶対に能率は上がらない、と管理職にはいつも言っています。

・最後に残る管理職 否定から始まるか、肯定から始まるか、その人の人生はまったく別のものになる

 私の経験では、初めから「どうもこれは難しいな」と否定が先に立ってやったことは、「本当に成功していません。逆に、少々無理があっても「これは自分のライフワークにしたい」、昔から「これをやりたい」と思っていたことは成功します。
 会社に入ってきたときは、それぞれの人に特徴はあっても、能力にはほとんど差はないと思います。しかし、仕事を受けて立つときに、積極的にチャレンジするか、初めから左半身に構えて受けるかによって、成功率は倍にも三倍にも変わってくるのではないでしょうか。部下を見ていても、能力があっても、スタートが「これはちょっとシンドイんと違うかな」と否定的な人より、肯定的な立場でスタートした人の方がどんどん仕事をやっていきます。これは非常に大事なことではないかと思います。
 これを、上に立つ者の立場からみると、それを踏み台にして多少の無理があっても伸びていく人と、「あいつはこんなこともでけへんのか」と言われて、ラインから外される人の二つに分けることになります。それは人生の大きな分岐点といえるでしょう。
 経営者だけでなく、管理職にとっても事情は同じです。今までと同じことが起こった場合には、こういう対応があるんだというマニュアルがあります。もしマニュアルの範囲内のことであれば、極端な場合、人は要らないのかもしれません。コンピューターのデータベースでこと足りるからです。
 別に課長とか、部長がいなくても、そういうマニュアルというのがどんどん完成されていれば、何かトラブルが起こっても担当者で処理できてしまいます。
 そうすると、最後に残る人間の管理職というのは何かというと、今までインプットされていなかったような特異なことが起こった時に、プログラミングはないけれど、自分の頭の中に、いろいろな事象がメモリーされていて、そのメモリーのここの半分とここの半分を足すのが、解決の確率として一番いいのではないかと推測できる人です。
 ところが、多くの場合、未経験の事態には「否定」から入ってしまう人が多いのです。 そういう人を管理職にしたのが悪いのかもしれないけれど、「いや、そんなことはやったことはありません。そんなことは分かりません。やってみないと分かりません」と対応する人があまりにも多いのです。
 それだったら、その人は要らないわけです。「やったことがないことも分かっているし、やってみないと分からないことも分かっている。でも、なにか手を打たなければならない。君はどう思う」と言った時に、「やっていません。やってみないと分かりません」としか答えの返ってこない人は本当に困ります。
「未経験は十分わかっている。しかし、君が今考えられる最高の対応は何か――と聞いているの。それが答えられなかったら、君は何にも存在価値がない」と言ってずいぶん怒ったことがあります。それに発奮して、何事でも積極的に対応できなければこれからの時代、どんどん取り残されていくと思います。「否定」しないで考える管理職は、いまやたいへん貴重な人材なのです。

・アイデアマンが陥る罠 開発で百点を取ってから利益が出るまでに、百倍のエネルギーが必要だ

「ソニーの井深大さん(ファウンダー・最高相談役)がおっしゃった言葉が強く印象に残りました。正確には覚えていませんが「開発に成功するまでに一のエネルギーが必要だとすれば、商品を試作するのに十倍。それから商品化するのに百倍。最終的に利益が出るまでには千倍はかかる」といった内容でした。とにかく開発に成功するなどというのが当たり前とは言わないけれども、単なる第一歩に過ぎないのだということです。

・一か月でできる仕事 一か月以上たっても生産性向上の兆しが見えないのは、真剣に取り組んでいないか、何もやっていないか、全くの無能力かのいずれかである

「時間が一番大切であって、完成度は二の次」という市場と、「百点満点を取ることが最重要課題で、それがいつまでにできるか」で勝負する市場があるのです。このようにニーズによって、その時間と質の関係が変わってくることを、分かっていなければ、技術者も営業マンもこれからはやっていけないのです。

・一人ひとりが「おもしろおかしく」 信念は決して曲げるな。時代は後からついてくる

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2020年11月7日
読了日 : 2020年11月7日
本棚登録日 : 2020年11月7日

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