ゾーンマネジメント

  • 日経BP (2017年7月21日発売)
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 正直、全くピンと来なかった。ここまで外れたのは最近記憶がない。でも、セールスフォースやマイクロソフトが事例になっているくらいだから、それ相応なものなのだろうが。

■別々にマネジメントすべき「4つのゾーン」
・パフォーマンスゾーン:既存事業で成果を出す(ライン部門)
・プロダクティビティゾーン:生産性を上げる(スタッフ部門)
・トランスフォーメーションゾーン:新規事業を拡大する(CEO直下の新部門)
・インキュベーションゾーン:新規事業を育む(R&D、事業開発部門)

 ゾーン防御における最初のルールは自社そのものを破壊的に変革してはならないということだ。地位を確立した企業の最も重要な資産は既存顧客ベースが持つ慣性力である。二番目に重要な資産は、既存の製品やサー ビスに付加価値を提供することを生業とするパートナー企業から成るエコシステムだ。これは素晴らしい資産であり、攻撃してくるスタートアップ企業がまさに自社にも欲しいと焦がれているものだ。それらを捨ててはならないし、既存の支持者たちの信頼を裏切ってはならない。コンサルタントが「あなたの会社を破壊的に変革すべきだ」と提言してきたときには追い返した方がよい。成功する破壊者は他社のビジネスを破壊するのであって、自分自身を破壊するのではない。

■生産性の向上には「システム」と「プログラム」が必要
システム ⇔ プログラム
効率性の向上 ⇔ ビジネス効果の増強
標準/構成変更可能 ⇔ 独自/カスタマイズ可能
安定性と永続性 ⇔ 適合性とタイムリー性
全社の課題を優先 ⇔ 受益者の課題を優先
予算提供は中央、トップダウンの意思決定 ⇔ 予算提供は受益者、ボトムアップの意思決定
柔軟性が課題 ⇔ 拡張性が課題

■六つのてこ
1.集中化
 リエンジニアリング対象のプロセスを決定し、社内から支援が得られたならば、最初のステップとして、権限も責任もある特定個人の下にガバナンスを集中させ、新しいポリシーを設定し、徹底的にそれを強制する。リエンジニアリングは人気のない活動であり、民主的な意思決定には向かない。もちろん、初期の構想段階ではレガシー・プロセスの改革方針についての十分な協議が必要だ。しかし、いったん取り組みが開始されたなら、適切に実行していくためにトップダウンのアプローチを採用すべきだ。
 最初の段階から指揮官を配備し、その人物と役割に対して役員のサポートを取り付け、現場からの不可避な反発が生じた際には徹底的に後方支援すべきだ。リエンジアリングの取り組み中に尻込みすることは、得られるメリットを低減させ、好ましくない状況を長引かせるだけになる。
2.標準化
 地位を確立した企業は典型的には複数の吸収合併を通じて成長するため、「標準的」業務手続きも最終的には多様化してしまう。そのような多様化は俊敏性を損ない、人材の異動を阻害し、保守コストを上昇させ、エラーを招く。互いにうまくやり取りできないシステムの埋め合わせをするためだけに人材が消費されてしまう。
 一つのやり方に合わせて標準化することで、この種の浪費を削減し、将来の拡張の基準が築かれる。やや厳格に過ぎることがあっても、破壊的変化が訪れたときには煮え切らない態度は許されない。
3.モジュラー化
 これは、リエンジアリングのターゲットになったプロセスを、現在の組織の境界を無視して機能的な構成要素に分割するという創造力を要する取り組みだ。ここでの目標は、プロセスの各ステップを処理対象のワークロードの状態変化という観点で再検討することだ。
 求められる状態変化はすべて独自のステップを必要とし、すべてのステップは好ましい状態変化を提供する。まだリエンジニアリングとは呼べない点に注意してほしい。付加価値活動を明らかにすると同時に、好ましい状態変化に貢献していない無駄なプロセスを発見しているだけだ。このような無駄なプロセスにとらわれている貴重な経営資源を解放しなければならない
4.最適化
 これは実行フェーズであり、無駄を排除するために再設計されたプロセスを導入するフェーズである。典型的には、タスクの併合や排除、反復的手続きの自動化、適切な箇所でのセルフサービスの採用、最適なテクノロジーの活用、ボトルネックや障害への予防的対応、そして、問題が発生したときに押すことができるSOSボタンの設置などが行われる。
 まったく異なるやり方で作業を実行するために、次世代のシステムを使用してプロセスが全面的に更改されることもある。ここでの重要な目標はコスト削減でも効率性の向上でもない(結果的にこれらの効果が得られることは多いが)。重要な目標は、コアに向けて経営資源を再配置し、高い効果を達成できるようにすることである。この目標が達成できなければ、時間を無駄にしただけに終わる。
5.測定
 最適化については収益逓減の法則がある。ゆえに、リエンジニアリングの取り組みのどこかで、プロセスをその時点の状態で安定させ、それ以降はできるだけ効率的に稼働しておくことが目標になる。
 それがプロセスの定量的測定を開始するタイミングだ。品質を維持し、対応が必要な逸脱状態を検知できるよう、重要な指標を監視するシステムを導入する必要がある。これにより、重要な監視機能を維持しながら、管理者の時間を大幅に節約し、他の作業に当てられるようになる。
6.アウトソース
 プロセスが適切に測定され、確実にコントロール下に置かれても全体的に自動化できない場合にはアウトソースの対象になる。これは社内の貴重な経営資源を別の場所で活用したい場合に有効だ。サービス・レベルは既に導入済みのプロセス・コントロール・システムにより設定されており、主要プロセスへの可視性の維持はアウトソーサーに委譲できる。システムの監視は依然として必要だが、それを運営する責任からは解放される。

 最後のポイントとして、六つのてこのモデルは順番に着手する必要がある。集中化の後に
いきなりアウトソースすることはできない。このような「やっかいごとを他人に押し付ける」アプローチは、恣意的な条件のサービス・レベル契約、スコープの絶え間ない変更、周整作業の大幅な遅延、コストの多大な上昇など、あらゆる問題の種になる。アウトソースには資格が必要だが、そのためには、標準化、モジュラー化、最適化、そして測定を順に実行するしかない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2021年1月16日
読了日 : 2021年1月16日
本棚登録日 : 2021年1月16日

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