武器としての決断思考 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社 (2011年9月22日発売)
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 2022年3冊目は、瀧本哲史さんの本としました。 実を言うと昨年末に読んではいたのですが二度読み、まとめが出来ておらず年を越してしまっていた本で、早起きできたタイミングで一日で再読・付箋作業を実施しました。 瀧本哲史さん、この本書かれたのはもう10年以上前で、多くの若者に「今の時代を生きるための武器」を与えようとされていたんだなと改めて感じます。
 文末にある「パスカルは難病のため、30代で死ぬ運命にありましたが、そんな彼が、何もかも思うようにはならない厳しい人生を生き抜くために依って立ったこと。それが、『自分で考える』ということでした。」という表現からの一節が、過ぎ去った事実を考えると、すごく心に響きました。 本当にすごい方です。改めましてご冥福をお祈り申し上げます。
 
 本としては、星海社新書から出ている瀧本さんの「武器としての…」関連の書籍の最も初めに出た本であり、京都大学で教鞭を振るわれていた内容を、とにかくわかりやすく学生に届け、「行動」に変えていただきたい、というメッセージを込められた本。「武器としての…」関連のほかの本とも並行して読んでいくと瀧本さんの熱量がすごく伝わるし、今回の本は主にディベートの思考法を軸とした本なのだけれど、最後のメッセージにはこうある。

 「この本を読んで、一つだけ忘れずに心に留めておいてほしいのは、『自分の人生は、自分で考えて自分で決めていく』ということ。思考停止だけは避けるべきだ。決断思考を手に入れたら、明日からの人生を力強く歩んでいってほしい。武器を持った君たちが、未来を作るのだから。」  

 僕としては、瀧本さんのご指摘のようにこうしてディベート思考で考え抜いて決断をということがあまりできるタイプではなく、どちらかというと直感で決めて、黒田博樹さんの「決断(決めて断つ)」から学んだ通り、「決めたほうを正解にする」というタイプなので、決める前に、きちんと「根拠を比較して得た結論」を出せるための参考書として、手元に置いておくこととします。


以下、引用です。自分へのまとめも含めて記載しています。
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P43 これからの時代における最大のリスクは、「変化に対応できないこと」です。
 これまでのやり方や生き方が通用しなくなって困るのは、それが他人が過去に決めた仕組みやルールだからでしょう。誰かの意思決定が役に立たなくなっただけであって、だったら自分で一から決めていけばいいだけの話です。
(中略)
 こんな状況になったら、このカードを切ろう。あんな状況になったら、あのカードを切ろう――そういった感じに、たった一枚のカードではなく、複数のカードを用意して、変化に応じて最適なカードを切っていく。決断していく。

P55 議論は、異なる意見、複数の意見をぶつけ合うことで、正解ではなく「いまの最善解」を導き出すためのものであり、その条件として、「言っている内容」で判断する、反論をきちんと認める、ものでなければなりません。
 この掟がまもられていないと、価値観の問題もあるので、議論は平行線をたどって、いつまで経っても結論が出ず、結局、声の大きい人の意見が通るということになりがちです。

P65 「準備と根拠」がディベートの鍵をにぎる
 さて、ディベートのルールをひと通り確認してわかることは、以下の2つの点が重要になってくるということです。
・準備が8割
・根拠が命
 まず「準備」。賛成・反対どちらの立場に立つかがわからないということは、あらかじめ準備をしなければならないということです。
 この準備が、ディベートの質を決定的に決めます。
 賛成側・反対側でそれぞれ相手がこう言ったらこう返すとか、考えられる反論の可能性をすべて洗い出しておかなければ、ディベートは一方的で短絡的なものになってしまい、最善解を導き出すようなこともできないでしょう。
 イメージとしては、かぎりなくカードゲームや将棋に近い。

P103 メリットの3条件
①内因性(なんらかの問題があること)
②重要性(その問題が深刻であること)
③解決性(問題がその行動によって解決すること)

P124 デメリットの3条件
①発生過程(論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
②深刻性(その問題が深刻であること)
③固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと

P158 「正しい主張」の3条件
①主張に根拠がある
②根拠が反論にさらされている
③根拠が反論に耐えた

P193
 根拠と推論を正しく捉えることができるようになれば、自分の主張を補強できる(反論に耐える主張を作る)だけでなく、相手の主張を崩すこともたやすくなります。
 ディベートというと、自分の主張を通すことに重点が置かれがちですが、実は逆で、自分の主張を無理やり通そうとしている人に反論することのほうが大事です。

P237 最後の最後は「主観で決める」
 ディベート思考とは、客観を経て、主観で決断する方法です。
 最初から主観的にものごとを決めるのではなく、一度、客観的に考えてみてから、最後は主観をもって決める。
 そう、最後の最後は、みなさんが自分の頭で考えなければならないのです。
 そこまでの筋道はつけてあげることができますが、価値観や哲学の問題には、自分自身で決着をつけるしかありません。
 (中略)
 どういう生き方を望むか――。
 ずっと何かに頼っていく生き方を望むのか?
 それとも、自分の人生は自分で決めるという、困難ではあるけど自由な生き方を望むのか?
 後者を望むのであれば、ディベートをはじめとする一般教養(リベラルアーツ)は、あなたの大きな武器となるでしょう。 
 人間を自由にするのが、学問本来の姿なのです。
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以上

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生き方
感想投稿日 : 2022年1月19日
読了日 : 2022年1月19日
本棚登録日 : 2022年1月19日

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