知識創造企業

  • 東洋経済新報社 (1996年3月1日発売)
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感想 : 98
5

改めて20年以上前の本を再読、やはり良書はさすがだと思う。 文句なしの★5つである。

この本は僕が会社に内定した際に会社側から提供された本の中の一つで当時あまりに感動して、そのままずっと保持している本である。学生から社会人になる際に「こんな知的な本を読むのか、知識創造とはすごいプロセスだ」とものすごく感動したことを今でもよく覚えているし、それは再読した本日も改めて思った。

野中郁次郎先生は、「失敗の本質」を書かれた共著者であったり、スクラム開発の考え方の根本を提示された方であったり、本当に自分の人生に大きな影響を与えた方ですが、先日読んだ「直観の経営」にもありましたが哲学の話、失敗の本質の話、そしてあまりにも有名な暗黙知/形式知のSECIモデルの話含めて、やはり改めて今になってもこの本はたくさんの方に読んでいただきたい。

そんな中で、改めて抜粋する部分は、序文にある。1986年の『The New New Product Development Game』に記載された内容をかみ砕いている。
少し長いが、お付き合いいただきたい。

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1986年の『The New New Product Development Game』の論文の中で、日本企業の新製品開発の速さと柔軟性を描き出すために、「ラグビー」のメタファー(比喩)を用いた。開発中の新製品を、一団となって走るチームがパスしながら進めるラグビーのボールに見立てたのである。(中略)

ラグビーのアナロジーを続けよう。「ボール」に注目しながら、我々が何を言いたいのかを説明したい。チームがパスでまわすボールの中には、会社はなんのためにあるのか、どこへ行こうとしているのか、どのような世界に住みたいのか、その世界はどうやって実現するのか、についてのチーム・メンバーの共通理解が入っているのである。きわめて主観的な洞察、直観、勘などもその中に含まれる。つまり、そのボールの中に詰まっているのは、理想、価値、情熱なのである。
次に、ラグビーで「どのように」ボールがパスされるかに注目してみよう。リレー競争の走者へ手渡されるバトンと違って、ラグビーボールはある一定のやり方では動かない。リレーのように順次線形に動くのではない。ラグビーボールの動きは、フィールドでのチーム・メンバーの連携プレーから生まれてくるのである。 それは、過去の成功や失敗の積重ねの上に、その場その場で決められる。 それはチーム・メンバー間の濃密で骨の折れる相互作用(インタラクション)を必要とする。
その相互作用のプロセスが、日本企業の中で知識が組織的に創られるプロセスによく似ているのである。この本で述べるように「組織的知識創造」は体験や試行錯誤であると同時に、アイデアを生み出す思考や他者からの学習なのである。またそれは、アイデアにかかわるだけでなく、アイデアル(理想)にもかかわるのである。

P115
私がメンバーにいつも言っていたのは、我々の仕事はリレー競争のように「おれの仕事はここからで、お前の仕事はそこからだ」というようなものではないということでした。全員が初めから終わりまで走らなければならないのです。ラグビーのように一緒に走り、ボールを右へ左へパスしながら、一団となってゴールに到達しなければならないのです。

P140
『ハーバード・ビジネス・レビュー』掲載の“The New New Product Development Game”で、今日のように変化と競争の激しい社会では、この重複的なラグビーアプローチは、スピードと柔軟性の点で圧倒的な強みを持っていると論じた。
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このラグビーアプローチ、は、すごくしっくりくるのですが、それがなぜ後日スクラムというメタファーになったか、は、結局よくわかりませんでしたが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2020年5月10日
読了日 : 2020年5月10日
本棚登録日 : 2020年5月10日

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