量子力学 I (物理学大系―基礎物理篇) (物理学大系 基礎物理篇 8)

著者 :
  • みすず書房 (1969年12月20日発売)
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感想 : 9
3

1951年に書かれた教科書とうことで
かなり古く、シュレディンガー方程式ができてから25年しか経っていない
ということで、この教科書では、そのシュレディンガー方程式ができる前までの話を丁寧に数式を使って説明する
何と言ってもこの本の中ではシュレディンガー方程式は出てこない
小出さんや猪木さん・河合さんの教科書では1章で紹介されて終わってしまうような内容を250pにわたって説明

古典論では説明できない現象を、なんとか数式で示し
そこからさらに根本的な原理を導き出そうとした科学者たちの困難を追体験するような感じ

初めて量子力学をやろうとする人にはさすがに必要ない知識だと思う
ここで挫折してしまうのは勿体無い
でもどこかのタイミングでやるのも損ではないと思う
ただ歴史としてどのように量子力学が出来上がったかを知るだけでなく、数式を使った式変形を体験することで得るものはある

<第1章 エネルギー量子の発見>
固体や気体の比熱の話と黒体輻射の話
一個ずつ統計力学での導出の話までやるが
これは田崎さんの熱力学でやったほうがよさそう

<第2章 光の粒子性>
光の粒子性の話をめちゃくちゃ丁寧にする
まずプランクの式から、波動性と粒子性の二面性の話
他ではあまり触れられないような話な気がした
そのあとも、波動性では説明できない現象を紹介して
光電効果とコンプトン効果の話へ
コンプトン効果や光電効果の実験がどのようにして
行われたのかという話まで乗っている

<第3章>
Larmorの歳差運動,Zeeman効果から原子の中に電子があることを突き止め
ラザフォード散乱からその内部構造を明らかにする
そして、電子の周回運動が電磁波を放出すると
原子の寿命がどれくらいになるかを計算する
(ここら辺の計算は原島鮮さんの力学でも扱われている)
原子スペクトルにおける古典論との矛盾とリュードベリ定数を紹介してから、その困難をプランク定数と幾つかの仮説を使ってボーアがいかに説明したかを示す
Earenfestの断熱定理から行く量子条件の導出はちょっとへこたれそうになった
量子化の証明としてのFrank-Hertzの実験とStern-Gerlachの実験が紹介される

<第4章 原子の殻状構造>
線スペクトルと周期表の関係から
電子殻の性質について触れる

<第5章 マトリックス力学の誕生>
今までの混沌とした理論をまとめる行列力学がいかにして導き出されたか
行列のいろいろな性質も示しながら紹介

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 量子力学
感想投稿日 : 2017年5月7日
読了日 : 2017年5月7日
本棚登録日 : 2017年2月8日

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