私が敬愛する作品『孤狼の血』シリーズ完結作。
私の所属するブク友会の相棒NORAxxさんの超熱レビューにより感化。文庫本一択だった私が生まれて初めて買った単行本小説。レジで店員さんに本書を渡すときに、プルプルと手が震えたことは、ここだけの話にしてつかあさい。
本作は完結作にして『孤狼の血』より6年前、昭和57年広島の舞台から始まる。愚連隊の【呉寅会】リーダー沖虎彦はヤクザに臆することなく、暴力と暴走により影響力を拡大していく。そんな沖の暴走を利用と抑止のために奔走する大上。そうだ。ガミさんだ。会いたかった。自然と脳内で映像が再生、役所広司が広島弁を捲し立てる。
作中ではガミさんが被っていたパナマ帽の由来、過去にガミさんの家族を襲った惨事が明らかになる。なぜガミさんが五十子会の壊滅に躍起になっていたのか、数年の時を経て私も腑落ちする。
しかし本作『暴虎の牙』の主役は沖虎彦だ。父親は五十子会の組員で、家の金を奪い家族に暴力を振るう鬼畜者。沖は子どもの頃から父親を、そしてヤクザを憎んで育つ。
同じく家庭環境に問題を抱えた三島考康、重田元と小学生時代に知り合い意気投合、後の【呉寅会】結成へと繋がる。
本作の見どころはこの3人を中心とした【呉寅会】の快進撃だろう。掟、縄張り、仁義など型にハマらない暴走劇はヤクザ以上にタチが悪い。特にヤクザや愚連隊との抗争シーンは容赦なくエゲツない。どうやら人間とは死を恐れず、怖いものを知らず、憎しみに暮れたその果てには化物となるらしい。その鬼畜っぷりは圧巻であり悪漢である。
しかし、やはりヤクザこそタチが悪い。これぞ仁義だと、負けず劣らずの報復劇がこれまた容赦なくエゲツない。どうやらこのシリーズ作には文字から痛みが伝播するサブリミナル効果が埋め込まれているらしい。読んでいると痛みが走るのだ。
そして沈静化にガミさんが動き、沖たちの逮捕により一旦は幕引きとなる。
そこから時は流れ20年後、懲役を終え出所した沖の前に立ちはだかるのは、ガミさん亡き後継者の日岡だ。自然と脳内で映像が再生、松坂桃李が広島弁を捲し立てる。(ちなみに映像は孤狼の血LEVEL2の日岡の方である)
沖は自分を嵌めた裏切りを許さず、広島制覇を目論み再び暴れ狂う。
ここからは怒涛の展開から、衝撃のクライマックスを迎え読了。約500ページに渡る盛り沢山な内容に、久々の徹夜読書により興奮冷めやらず、ナチュラルハイで今このレビューに至っている。
時代は常に「可変」するもの。国も組織も環境も人もモノも。そんな時代に「不変」であることの逞しさと虚しさを味わうことができる1冊であった。
求む、本シリーズファン
求む、本シリーズ完結撤回と続編(署名活動も辞さない)
ここまで私を虜にする恐るべし柚月裕子の虜である私。
ぶち煙草吸いたい。
4年6か月と3日前にやめたけど。
ぶち酒呑みたい。
1年11か月と20日前にやめたけど。
- 感想投稿日 : 2022年6月5日
- 読了日 : 2022年6月5日
- 本棚登録日 : 2022年6月5日
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