笑うハーレキン (中公文庫 み 48-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (2016年1月21日発売)
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感想 : 130
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「道尾秀介」の長篇作品『笑うハーレキン』を読みました。

「道尾秀介」作品は、昨年3月に読んだ『ノエル―a story of stories―』以来なので、約1年振りですね。

-----story-------------
あいつはいつも、ここにいる。

経営していた会社も家族も失った家具職人の「東口」。
川辺の空き地で仲間と暮らす彼の悩みは、アイツにつきまとわれていることだった。
そこへ転がり込んできた謎の女「奈々恵」。
川底に沈む遺体と、奇妙な家具の修理依頼。
迫りくる危険とアイツから、逃れることができるのか?
「道尾秀介」が贈る、たくらみとエールに満ちた傑作長篇。

これはミステリーなの?サスペンスなの?
謎の組織まで現れ、アクション映画さながらのスリリングなカーチェイスまで。あー面白い!/「小泉今日子」
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40歳の「東口太一」は、東京・荒川沿いのスクラップ置き場で、都会の片隅に吹き寄せられたホームレス仲間の「ジジタキさん」、「モクさん」、「チュウさん」・「トキコさん」夫婦、犬の「サンタ」と暮らしている家具職人… 息子「笙太」を川の事故で喪い、不況の波に飲まれた取引会社の家具商社・イザワ商事の倒産により、経営していた家具製造会社・トウロ・ファーニチャーが連鎖倒産、その後、妻「智江」からは離婚を言い渡され、家具の修理道具一式とともにトラックの荷台で寝起きし、夜な夜な亡き息子を映したホームビデオを見返して生活している、、、

そのスクラップ置き場は持ち主の「橋本」が住む場所として提供してくれており、「東口」を始めとするホームレスの5人は、「橋本」が所有するアパートの一室を共同で使用させてもらい、そこを住民票の登録住所にして、トイレ、お風呂、物置用の場所として使わせてもらっていた。

そんな「東口」のもとに、弟子入り志願の若い女性「西木奈々恵」が押しかけてきてから、「東口」の周辺で不穏な出来事が続き、息子の事故死後から「東口」にだけ見えるようになった疫病神からは、不吉なことばかりを告げられる… そして、ある奇妙な修理依頼をきっかけに、「奈々恵」や仲間たちの秘密が明かされていく、、、

ドロップアウトした男が一歩を踏み出す姿を、ユーモアを交えて軽快に描き出す感動的な作品でしたね… どんどん先を読みたくなるような展開で、登場人物に感情移入して、一緒になって這い上がり、そして、エンディングでは自分自身も救われたような感覚を得られる作品でした。

誰だって、自分や家族や仲間を守るために、素顔を仮面で隠して生きているんですよね… 生きていくうえで必要なことだと思うけど、どうせならポジティブな仮面をかぶった方がイイなぁ と感じさせらましたね、、、

終盤、息子を撮影したビデオの秘密が明らかになるとともに、「東口」の過去が明らかになり、物語の味方が一変するところが印象的だったし、巧いなぁ と思いました… じーんとしちゃう作品でしたね。

ちなみに、タイトルにも使われているハーレキンとは、道化師のことだそうです、、、

顔に笑顔の化粧をして、人を笑わせるけど、濃い化粧の下の素顔は見えない… 苦痛に歪んでいても、涙を溜めていても、笑顔の仮面をかぶっているのがハーレキンなんですよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>大衆文学あれこれ
感想投稿日 : 2022年12月17日
読了日 : 2018年2月26日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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