さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 7-2)

  • 早川書房 (1976年4月1日発売)
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「レイモンド・チャンドラー」の長篇ミステリー作品『さらば愛しき女よ(原題:Farewell, My Lovely)』を読みました。

『チャンドラー短編全集3 待っている』に続き「レイモンド・チャンドラー」作品です。

-----story-------------
前科者「大鹿マロイ」は、出所したその足で以前別れた女を捜し始めたが、またもや殺人を犯してしまった。
たまたま居合せた私立探偵「マーロウ」は、警察に調べられる。
その後、「マーロウ」は、高価な首飾りをギャングから買い戻すための護衛を依頼されるが、自らの不手際で依頼人を死なせてしまう。
苦境に立った彼を待っていたものは……。
全篇に流れるリリシズムとスリルと非情な眼は、既に探偵小説の域を超え独自の世界を創り上げている。
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「レイモンド・チャンドラー」の私立探偵「フィリップ・マーロウ」を主人公とする長編シリーズ全7作品のうちの第2作目(1940年発表)… 一般的にイメージしているミステリー作品とは違い、トリックや犯人捜しを愉しむというよりは、「マーロウ」の生き方、独特の世界観や美学を愉しむ作品という感じでした、、、

物語の根幹から外れた枝葉の部分や洒落た科白で、独特な愉しみがあるものの、「マーロウ」の価値観が理解できないと面白味が半減してしまう、そんな作品でしたね… 警察官が汚職に手を染めていたり、悪党の首領が紳士的だったりと、敵味方の区別がつきにくいのも本シリーズの特徴ですね。

刑務所から出てきたばかりの大男「大鹿マロイ」は、昔の恋人でナイト・クラブ「フロリアン」の歌手だった「ヴェルマ」を探しに酒場「フロリアン」を訪ねるが、酒場の主が何も答えようとしないのでカッとなり、再び殺人を犯し逃亡する… 偶然、仕事で現場に居合わせて「マロイ」と話しこんでいた私立探偵「フィリップ・マーロウ」は警察に尋問されるが、「マロイ」を捕まえたいならまず「ヴェルマ」を見つけることだという勧告を警察が受け入れないので、自ら「ヴェルマ」、「マロイ」探しを始める、、、

そんなとき「リンゼイ・マリオ」という男から、盗まれた翡翠のネックレスを買い戻すことに立ち会ってほしいという怪しげな用心棒的仕事の依頼が「マーロウ」の元に舞い込む… その取引の最中に「マリオ」は殺され、「マーロウ」もまたなぜか命を狙われる中、「ヴェルマ」がかつて雇われていたナイト・クラブ「フロリアン」の元女主人「ジェシー・フロリアン」も殺される。

麻薬漬けにされて「ソンダボーグ」の病院に監禁された「マーロウ」は、脱出する際に病院内に「マロイ」が匿われていることを突き止め、「ヴェルマ」に会わせると伝えて「マロイ」を自宅に呼びだす… 「マーロウ」の指示で別室に身を隠す「マロイ」のもとに現れたのは翡翠のネックレスの持ち主である「グレイル夫人」だった、、、

明らかになる真相、そして最後の悲劇が訪れる… 愛する女性、8年間も追い求めていた女性に、ようやく出会えたのに、女性は彼を待っておらず、女性は彼に銃を向ける。

うーん、哀しい結末でした… 「マーロウ」は、どんな結末を予想して二人を引き合わせたのかな、、、

「マーロウ」は捜査を手伝ってくれた「アン・リアードン」と良い雰囲気になって… というエンディングなので、ちょっとなぁ って感じはしましたね。

後味がスッキリしない感じがしましたが、、、

「マーロウ」を主人公としたハードボイルド作品として割り切れば、この結末もありなのかな… と思います。

先日読んだ、短篇集『チャンドラー短編全集3 待っている』に収録されていた『犬が好きだった男』が、この作品の骨子となっているらしく… 「マーロウ」が麻薬を注射されて病院に監禁されたり、賭博船に侵入するシーン等は、ほぼそのまま流用されていましたね、、、

デジャヴュを感じながら読み進めた感じでした。



以下、主な登場人物です。

「フィリップ・マーロウ」
 私立探偵。

「大鹿マロイ」
 身長2メートル近い大男で、腕っ節が強い。
 銀行強盗で8年間オレゴン州立刑務所に服役する。
 恋人のヴェルマ・ヴァレントを探してセントラル・アヴェニューの黒人専用のレストラン兼賭博場「フロリアン」に立ち寄り、殺人を犯す。

「ヴェルマ・ヴァレント」
 元ナイト・クラブ「フロリアン」の歌手。マロイの昔の恋人だった。

「ジェシー・フロリアン」
 ナイト・クラブ「フロリアン」の元経営者マイク・フロリアンの妻。
 マーロウはヴェルマの情報を求めて彼女の元を訪れる。
 不潔で自堕落な生活を送り、アルコール中毒でもある。

「リンゼイ・マリオ」
 マーロウの依頼人。モンテマー・ヴィスタに住む。
 盗まれた翡翠のネックレスを買い戻す一件で、マーロウに護衛を依頼する。

「アン・リアードン」
 元ベイ・シティ警察署長の遺子(一人娘)。フリーライター。

「グレイル夫人」
 病身の富豪を夫に持つ上流婦人

「ジェームズ・アムサー」
 神経病医。

「セカンド・プランティング」
 アムサーに使われている用心棒で体臭の強いインディアン。

「ソンダボーグ」
 病院を経営している怪しい医師

「レアード・ブルーネット」
 暗黒街のボス。賭博船を二隻持っている。

「ナルティー」
 77丁目警察署の警部。

「ランドール」
 ロスアンゼルス警察署殺人課の警部。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(海外)
感想投稿日 : 2022年10月10日
読了日 : 2016年11月21日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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