鳩のなかの猫 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房 (2004年7月15日発売)
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「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『鳩のなかの猫(原題:Cat Among the Pigeons)』を読みました。

「アガサ・クリスティ」作品は、10月に読んだ『愛国殺人』以来ですね。

-----story-------------
中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値をもつ宝石が消え失せた。
一方、ロンドン郊外の名門女子校、メドウバンクにも事件の影が忍び寄る。
新任の体育教師が何者かに射殺されたのだ。
ふたつの謎めいた事件の関連は?
女子学生の懇願を受けて、ついに名探偵「エルキュール・ポアロ」が事件解決に乗り出した。
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1959年に刊行された「エルキュール・ポアロ」シリーズ長編第28作目の作品、、、

タイトルの『鳩のなかの猫』は、女学生(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意のようです。

また、中東ラマット国での革命の描写は、「アガサ・クリスティ」が夫とともに、毎年のように遺跡の発掘作業に赴いていたイラクにおいて、1958年に発生した(王政が廃止され、共和制へ移行)がモチーフになっているらしいです。


 ■プロローグ・夏季学期
 ■1. ラマット国の革命
 ■2. バルコニイの女
 ■3. ロビンスン氏登場
 ■4. 旅行者帰る
 ■5. メドウバンク校からの手紙
 ■6. 最初の頃
 ■7. 風向き
 ■8. 殺人
 ■9. 鳩の群のなかの猫
 ■10. 奇想天外な話
 ■11. 会談
 ■12. 古いランプと新しいランプとの交換
 ■13. 破局
 ■14. ミス・チャドウィック眠られぬ夜を過す
 ■15. 殺人事件は繰返す
 ■16. 室内競技場の謎
 ■17. アラディンの洞窟
 ■18. 協議
 ■19. 協議のつづき
 ■20. 雑談
 ■21. 手がかりの整理
 ■22. アナトーリアでのできごと
 ■23. 大詰め
 ■24. ポアロの説明
 ■25. 遺贈


ロンドン郊外の名門女子校メドウバンクを舞台に、室内競技場で連続して発生する女性教師の殺人事件、、、

ラマット国の国王の従妹である「シャイスタ王女」の転入、ラマット国から持ち出された莫大な価値を持つ宝石の謎、引退を考えている「バルストロード校長」の後継者に関する悩み、女生徒「ジェニファ・サットクリフ」のテニスラケットを母親から預かったと偽って新品と交換してくれた謎の女性… 等々の伏線が、利発な少女「ジュリア・アップジョン」の機転と、「エルキュール・ポアロ」の灰色の脳細胞によって解き明かされる展開。


登場人物が多く、序盤はちょっともどかしい展開でしたが、それぞれの人物像や事件の背景を理解するためには必要な内容なんでしょうね、、、

後半の329ページになって、ようやく「エルキュール・ポアロ」が登場… その後は、小気味よい展開で一気に事件が解決に向かいます。


女性教師が三人殺されるのですが… 同一犯が同一の目的・動機で行った犯行と思い込んでしまうところが、真相をミスリードしてしまう展開になっていましたね。


そして、校長秘書「アン・シャプランド」の正体を知っていた「ジュリア・アップジョン」の母親、、、

「バルストロード校長」が序盤の「アップジョン夫人」の言葉を聴き逃していなければ… という伏線の配置の仕方も、巧いなぁ と感じました。



以下、主な登場人物です。

「オノリア・バルストロード」
 メドウバンク校の校長

「エリナー・ヴァンシッタート」
 ドイツ語・歴史の教師

「チャドウィック(チャディ)」
 数学教師

「アイリーン・リッチ」
 英語と地理の教師

「アンジェール・ブランシュ」
 仏語教師

「グレイス・スプリンガー」
 体操教師

「エルスペス・ジョンスン」
 舎監

「アン・シャプランド」
 校長秘書

「アダム・グッドマン」
 園丁

「ジェニファ・サットクリフ」
 メドウバンク校生徒

「シャイスタ」
 メドウバンク校生徒。王女

「ジュリア・アップジョン」
 メドウバンク校生徒

「ジョアン・サットクリフ」
 ジェニファの母親

「ボッブ・ローリンスン」
 ジョウンの弟。ラマット国王のパイロット

「アリー・ユースフ」
 ラマット国の国王

「ロビンスン」
 謎の人物

「パイクアウェイ」
 陸軍大佐。特捜部主任。

「ケルシー」
 ハースト・セント・サイプリアン署捜査課警部

「エルキュール・ポアロ」
 私立探偵

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(海外)
感想投稿日 : 2022年7月22日
読了日 : 2014年12月1日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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