「新田次郎」が自身の体験を元に描き出した傑作長篇『富士山頂』を読みました。
『芙蓉の人』に続き「新田次郎」作品です。
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富士山頂に世界一の気象レーダーを建設せよ!
昭和38年、気象庁の元に始動した一大事業。
測量課の「葛木」を始め、その任務を受けた男達は、熾烈な入札競争、霞が関の攻防、暴風雨が吹き荒れる3776mの苛烈な現場と闘いながらも完成に向け邁進してゆく。
著者の体験を元に、完遂迄の軌跡を活写した記録文学の傑作。
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昭和42年(1967年)9月の『別冊文藝春秋』で発表された作品… 「新田次郎」が気象庁測器課長として実際に経験した、富士山頂の富士山測候所に台風観測のための巨大レーダーを建設する様子を描いた物語です。
気象庁は、2億4千万円の予算が確保できたことから、昭和38年(1963年)から昭和39年(1964年)かけて、台風観測のために、富士山頂に気象レーダーを設置する計画に着手… 責任者である測器課長補佐官(建設時には測器課長)の「葛木」は、予算化までの旧・大蔵省における予算の復活折衝、大手電機メーカー各社による激しい入札争い、政治家や政府高官を使った圧力等の困難な問題に立ち向かいながら、レーダー設置実現に向けて邁進する、、、
富士山の馬方や強力の組合を統一させ富士山頂までブルドーザーを使った輸送方法の確立、建設が始まってからの3,700メートルを越える高所で高山病に苦しみながら働く建設会社の現場監督や労働者の苦難、ヘリコプターの能力を超えた危険なドーム輸送に立ち向かうヘリコプター会社の人々とパイロットの活躍等、苛酷な現場を経験しないと描くことのできないリアリティのある描写に、引き込まれてしまいましたね。
富士山頂気象レーダー建設という事業を軸に、難事業に取り組んだ人々に多角的にスポットを当て、錯綜した動きを追うことで、奥行きのある作品に仕上がっていたと思います… 愉しめました。
- 感想投稿日 : 2023年1月31日
- 読了日 : 2018年10月5日
- 本棚登録日 : 2022年3月11日
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