わたしの渡世日記 上 (文春文庫 た 37-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (1998年3月10日発売)
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「高峰秀子」のエッセイ『わたしの渡世日記〈上〉〈下〉』を読みました。

第24回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品です。

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〈上〉
昭和を代表する大女優が波瀾万丈の人生を綴った第一級の自伝。

「お前なんか人間じゃない、血塊だ」――養母に投げつけられた身も凍るような言葉。
五歳で子役デビューし、昭和を代表する大女優となった「高峰秀子」には、華やかな銀幕世界の裏で肉親との壮絶な葛藤があった。
函館での誕生から戦時下での撮影まで、邦画全盛期を彩った監督・俳優らの逸話と共に綴られた、文筆家「高峰秀子」の代表作ともいうべき半生記。
日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。

〈下〉
戦後を彩る大ヒット映画の数々と共に綴られる女優の偉大なる足跡。

本邦初の総天然色長編映画『カルメン故郷に帰る』、『名もなく貧しく美しく」、『二十四の瞳』、『恍惚の人』……戦後を彩る数々の大ヒット映画の製作裏話と共に、女優「高峰秀子」が綴った半生記。
養母とのしがらみに苦しむ一方で、「谷崎潤一郎」や「梅原龍三郎」らとの交流を成長の糧とし、「松山善三」との結婚で初めて安息を得たことにより、「ひとりぼっちの渡世」に終止符を打つまでを描く。
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昭和を代表する俳優の中で大好きな女優ひとり「高峰秀子」、、、

1975年の5月から1976年の5月まで「週刊朝日」に連載された自伝的エッセイを上下二巻にまとめた作品です。

 〈上〉
 ■雪ふる町
 ■旅のはじまり
 ■猿まわしの猿
 ■土びんのふた
 ■つながったタクワン
 ■父・東海林太郎
 ■母三人・父三人
 ■ふたつの別れ
 ■お尻がやぶれた
 ■鎌倉山の女王
 ■一匹の虫
 ■八十三歳の光源氏
 ■神サマのいたずら
 ■紺のセーラー服
 ■血染めのブロマイド
 ■鬼千匹
 ■ピエロの素顔
 ■兄は馬賊だった
 ■にくい奴
 ■ふたりの私
 ■馬
 ■青年・黒澤明
 ■恋ごころ
 ■鶴の化身
 ■神風特別攻撃隊
 ■同期の桜

 〈下〉
 ■黄色いアメリカ人
 ■赤いスタジオ
 ■十人の旗
 ■ハワイの花
 ■お荷物
 ■キッチリ山の吉五郎
 ■鯛の目玉
 ■「空・寂」
 ■ウソ泣き
 ■ダイヤモンド
 ■色と欲
 ■木下恵介との出会い
 ■カルメン故郷に帰る
 ■遁送曲
 ■勲章
 ■続・勲章
 ■愛の人
 ■パリへ
 ■ZOO
 ■夕陽のパリ
 ■再び戦場へ
 ■二十四の瞳
 ■ラスト・ダンス
 ■イジワルジイサン
 ■バズーカお佐和
 ■骨と皮

 ■解説 沢木耕太郎

「高峰秀子」って、大物女優として華々しい生活をしていたんだろうなぁ… というステレオタイプ的な先入観があったのですが、本書を読んで、その考えが180度覆りました。


その理由は幾つかありますが、具体的には、

複雑な家庭環境から叔母「志げ」の養女として育てられ、

叔母「志げ」の強く見当違いで狂気的とも言える愛情(愛憎?)に葛藤し、戸惑いながら、

経済的に困窮していたことから5歳から家族の大黒柱として俳優として働かざるを得ず、

養父養母だけでなく、実父や義母、兄弟等、親族の生活まで金銭的に援助し、

俳優業が忙しく学校(義務教育含め)にはほとんど通うことができず、

等々、現代では考えられない人生を歩んでいるんですよねぇ… 本当に驚きましたね。


そして、もう次に驚いたのは、文章の巧みさ、、、

義務教育をほとんど受けることができず、俳優業に専念していた人が書いたとは思えない… ユーモアを交えながら、自分のことを冷めた目で冷静に描いているところや、他者を的確に描いているところ等、エッセイストとしても十分な素養を備えていると感じました。

苦しいことや、悲しいことがあっても、人生を肯定しつつ、力強く前向きに生きていく姿に共感しましたね。


著名人との交流も幅広く、、、

映画界では、有名女優「田中絹代」との交流、映画監督「黒澤明」との淡い恋、私の好きな日本映画界の巨匠「小津安二郎」、「木下恵介」、「成瀬巳喜男」との交流等々… を興味深く読ませてもらったし、

映画界を飛び越えた幅広い人脈として、作家「谷崎潤一郎」や画家「梅原龍三郎」、歌手「東海林太郎」との交流等々… これには驚きました。


「高峰秀子」って、元々好きな俳優さんなのですが、本書を読んで、一層、強い魅力を感じるようになりましたね。


愉しく読めるエッセイ… というか、素晴らしい自伝でした。

写真が盛りだくさん使ってあるのも嬉しかったですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>エッセイ/コラム/旅行記/私小説
感想投稿日 : 2022年6月27日
読了日 : 2014年3月24日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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