岩波新書版『歴史とは何か』を読んだのは、はるか昔の大学生のときだったが、「歴史とは、現在と過去のあいだの終わりのない対話である」という有名なフレーズに触れて、何となく満足してしまったような気がする。
今回、新しく訳された新版を読んで、前に読んだときいかに読めていなかったかを痛感した。
カーは第二版のための準備をしていたが、残念ながらその前に亡くなってしまった。本書の元となった講演が行われたのは1961年。その後の歴史学に関する議論の進展を考えるとどうしても古さは否めないが、各所に示唆に富む考察や見解が示されていて、今でも読み応えのある本だと思う。
本書には、第二版準備の草稿について弟子のR.W.デイヴィスによる解説、カーによる自叙伝が付されていて、大変参考になる。
新書版と比べていないので明確には分からないが、元々講演であったからか、だいぶくだけた語り口調の翻訳という印象。そのためか、内容はかなり難しいことを言っているのだが、その割に読みやすい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年4月4日
- 読了日 : 2022年5月22日
- 本棚登録日 : 2022年5月22日
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