センセイのあたりからぐいぐいと世界観に惹き込まれた。
科学が発展していくなかで、忘れてはいけないことが詰まっている。
人のつながりの大切さや自然の雄大さ、丁寧に作ったご飯の美味しさなど、日々忙しい社会で生活する中で忘れてしまっていることを思い出させてくれるような本だった。
昔からの言い伝えや神様などを信じる人にはぴったりな1冊だと思う。
私は自然の中に神様がいるという考えはとても好きで響いた。あらゆるものに魂が宿ると考え、木や岩を神様だと思って敬い、信仰してきた日本人の心が詰まっていると思うから。
楽しいことばかりじゃないと思うけれど、1度は住んでみたいなと思うくらい、自然に囲まれ人情に溢れた素敵な村だった。
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「人間には、知恵と技術がある。これは素晴らしいことや。でもな、だからというて、なんもかも人間の自由にできると思うたらあかんのや。すごい力というのは、恐る恐る使わんとあかんで。人間より大きな力を持った存在がおって、間違うたことをしたら叱られると畏れなあかんで。そんな風に生きた方がええに決まっとる」
「経済成長せなあかんのはわかるけど、自然をどんどん壊したり、伝統文化をないがしろにしてええことらぁ、一つもない」
「人間の中から、どんどん畏れや敬いがなくなっていく。それは、科学や技術が発達していくのと引き替えなんやろう」
(あとがき)
人は「畏れ、敬う心」を、決して忘れてはならない。それを忘れたら、人間は滅びる。日本は、今、滅びかけているようで恐ろしい。
空気が澄んでいて、水と緑が美しくて、時間がゆっくり流れる。豊富な情報も便利なツールもないけれど、暮らしてゆくにはさほど苦にならない。隣近所で助け合えば、たいがいのことはなんとかなる…。私たちは、今さらこういう時代へは帰れない。
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農業は自然の条件に左右される。食事は命に関わるから、人々は神様を祀った。現在では機械化が進んでいるけれど、自然の条件に左右されることに変わりはない。自然から離れて農業から離れている人が多く、このことを忘れてしまっているんじゃないかなと。
- 感想投稿日 : 2022年8月7日
- 読了日 : 2022年8月7日
- 本棚登録日 : 2022年8月7日
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