花嫁人形 (佐々木丸美コレクション)

著者 :
  • ブッキング (2007年2月24日発売)
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感想 : 5
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本岡剛造の実兄であり北一商事代表取締役の一家に引き取られた孤児、昭菜の物語。父母と4姉妹から家族と認知されず、身体が弱いことを理由に教育も受けられなかった昭菜。彼女は孤独だったが、同居している母の実弟の壮嗣(つよし)だけは皆が居ない時に限り優しい。そんな彼を昭菜は秘かに慕っていたが家族も彼を慕い、特に末っ子の織は叔父の嫁になると無邪気に想いを寄せていた。そんな昭菜はとある事件に遭遇したことで罪を背負うことになる──。『雪の断章』『忘れな草』に続く孤児シリーズ第3弾。旧版の講談社版で読了。
孤児シリーズ前2作は繰り返し読むものの、壮嗣の存在が嫌いで2度ぐらいしか読まなかった本作。今回読了しその気持ちはあまり変わらなかったが、他の登場人物それぞれの苦悩に惹かれ作品の印象がだいぶ良くなった。昭菜の事件を見過ごした行いに相変わらずゾッとするが、彼女がここまで追い詰められたのは家族扱いを受けなかった悲劇であり、父母も昭菜の出生からうまく接することができなかったからと考え、恐らく避けられなかった出来事なのだろうと思う。辛いけれどね。『忘れな草』から間を空けて読んだため、大場秀二と斎木と結城の名前が飛び交い混乱。それに加えて、北斗興産の一族の上久京子、北一商事の柳川稔の恋愛事情からの継承権争いも含まれてる。なんてややこしい!『影の姉妹』では東邦産業の創業理由が明かされるぐらいだから良かったけれど、今回は複雑すぎる。正直昭菜の恋愛を抜きにこれだけ紹介した別本欲しいよ。ブッキング版『夢館』の相関図見ないと理解できないわ。
(文庫と比較読みしたメモ)
単行本と文庫の違いを見ようと同時進行を試みた。友人の指摘どおり物語を締めくくる時に登場した、史郎さんの行く末「歩き去る人をふり向いたとき息をのんだ。その後ろ姿に大きな結晶が浮かんだ。ぐらりと揺れて吹雪にとけてしまった。郁ちゃんのときに見た散り方に似ていた。幻は一瞬に消えた。(講談社版、186〜187頁引用)」を抜いただけ。もっと大幅に違うと考えて期待していただけに残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(一般向け)
感想投稿日 : 2015年11月2日
読了日 : 2015年10月21日
本棚登録日 : 2015年11月2日

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