銀河鉄道の父 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2020年4月15日発売)
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感想 : 203
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門井慶喜『銀河鉄道の父』講談社文庫。

第158回直木賞受賞作の文庫化。大傑作。岩手県民が敬愛する岩手の偉人・宮沢賢治。岩手県民はもとより日本国民の殆どが彼の遺した数々の傑作を知っていると思う。しかし、賢治を育てた父親がどんな人物だったかを知る人は岩手県民でさえ少ないだろう。宮沢家の厳格で時に親馬鹿な父親・政次郎が見つめてきた宮沢賢治とは……そして、賢治の実像は……如何にして傑作童話を書くに至ったのか……

本作では宮沢賢治という人物は父親を始めとする家族の愛情を受けながらも、家業の質屋を継ぐには頼りない浪費家の秀才として描かれている。賢治も所詮、花巻の片田舎に住む市井のひとりに過ぎず、完璧な人間ではないのだ。あの手この手で何度も父親に金子を無尽する辺りの描写が面白い。人生をさ迷ううちに詩人・童話作家としての道を見出だした賢治は……

やがて賢治に訪れる僅か37年余りの人生の終焉。その時、父親の政次郎は……

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
……

松尾芭蕉の辿った奥の細道や弁慶が座った岩とか持ち上げた石とか、日本全国の至る所に彼らの足跡があるように岩手県内の至る所に宮沢賢治の足跡がある。花巻近辺は言わずもなが、一関市の東山にある石砕工場、紫波に現存する親友の生家など、様々な場所に賢治の足跡があり、こんな所にも賢治は足を運んだのかと驚かされる。

本体価格920円
★★★★★

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2020年4月28日
読了日 : 2020年4月28日
本棚登録日 : 2020年4月26日

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