恋文横丁八祥亭 (小学館文庫 た 41-1)

著者 :
  • 小学館 (2022年8月5日発売)
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感想 : 3
5

立川談四楼『恋文横丁八祥亭』小学館文庫。

人気落語家による連作人情事件短編小説。

立川段四楼と言えば、Twitterで世相をばっさり斬り裂くような鋭いツイートをよく目にする。そんな落語家の方なら小説も面白いに違いないということで初読み。

こんな殺伐とした大混乱の時代だからか、このような人情話が心に沁みる。期待通り面白い。

渋谷の居酒屋『八祥亭』を舞台に繰り広げる人間模様。大女将のしのと若女将の典子が営む居酒屋に持ち込まれる様々な事件。事件を解決するのは警視庁のキャリアでありながら、表に出ることのない訳あり落語家の山遊亭八祥こと高倉という面白い設定。

『第一話 消えた銀二郎』。 落語のような心地好いテンポで物語は展開する。良い話だな。松濤のお屋敷に住む資産家老人・銀二郎が失踪する。老人の行方を八祥が調べると……★★★★★

『第二話 魚定の源ちゃん』。 世相を巧く反映しながら、物語は展開する。人情は世界を越える。確かに最近はベトナム人をよく目にする。若女将の典子が仕入れている鮮魚店で働くベトナム人青年のキャバクラ嬢になった姉が行方をくらまし、八祥が姉の行方を探す。★★★★

『第三話 危うし中華共楽』。正直に生きて、真面目に働くことは美徳であるが、なかなかそれに見合った報酬や幸せは得られない。しかし、最後に救われるの真面目に働いた者だ。『八祥亭』にやって来た町中華の名店『共楽』の老店主は、しのと典子に閉店を決めたことを告げる。そのことを八祥に告げると……★★★★★

『第四話 猫のお菓子屋さん』。 感動、感涙の物語。『八祥亭』に来た客が公園で化け猫を目撃したことを話す。その正体は猫のぬいぐるみを着た女性のお菓子屋だったのだが、その女性は大きな悩みを抱えていた。再び、八祥が動く。★★★★★

『第五話 ママの味』。最後に一番良い話を持って来た。これまた感動、感涙の物語。結婚を間近に控えた青年は式を挙げたくないという婚約者に困っていた。その婚約者には頑なに式を拒む理由があった。その理由を聞いた八祥は問題を解決するために奔走する。★★★★★

本体価格560円
★★★★★

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2022年8月10日
読了日 : 2022年8月10日
本棚登録日 : 2022年8月9日

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