深町秋生『ブラッディ・ファミリー 警視庁人事一課監察係 黒滝誠治』新潮文庫。
警察の身内でさえも飼い犬に仕立て上げるドッグ・メーカーと恐れられる黒滝誠治を主人公にしたハードな警察小説シリーズの第2弾。
今回もまた警察組織の腐敗と対決することになる黒滝。最後の最後まで、読み応えがある作品だった。
有能な若手女性刑事・波木愛純が飛び降り自殺する。警察は内務調査の結果、ただの自殺として処理する。
しかし、警務部長の白幡一登から再調査の指示を受けた黒滝誠治が強引な方法で警察関係者が隠蔽していた波木の遺書を手に入れる。遺書によると波木は上司の伊豆倉陽一にクスリを盛られ、レイプされていたことが浮かび上がる。陽一の父親、伊豆倉知憲は警察庁長官の座を約束されたエリートだったのだ。
黒滝は上司の相馬美貴と共に危険を省みずに正義のために警察組織に牙を剥く。
警察に限らず組織というのは上に行けば行く程に権力が集中し、その権力を己れの本来の力だと勘違いするところから組織の腐敗は始まる。権力というのは下に命令するだけと勘違いし、自ら汗をかいて働くことを止め、責任を果たさないようになる。権力は肩書きのオマケに過ぎないのに、下に仕事を垂れ流すのが仕事と勘違いするのだ。日本社会ではよくある話。
本体価格710円
★★★★★
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2022年4月30日
- 読了日 : 2022年4月30日
- 本棚登録日 : 2022年4月29日
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