未解決―封印された五つの捜査報告 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2011年10月28日発売)
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感想 : 29
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一橋文哉『未解決―封印された五つの捜査報告』新潮文庫。

5つの事件の真相に斬り込んだノンフィクション。5つの事件の殆んどは犯人逮捕により既に解決をみた事件と思われているが、本当の意味では解決していない。このノンフィクションにより真相は明らかにされたのだろうか…

新たな視点で事件に迫る試みは認めるものの、結局は真相には全く辿り着いていないという点に失望。

『住友銀行名古屋支店長射殺事件』。利潤至上主義の銀行と金に群がる暴力団と右翼団体の爛れた構図、イトマン事件との関連。犯人は捕まるものの、替え玉との見方もあるようだ。そして、犯人が獄中死したことから真相は闇の中に、銀行の多額損失に税金を投入という不条理。

『八王子スーパー強盗殺人事件』。冒頭から驚愕の描写。謎の多いナンペイ大和田店の強盗殺人事件の黒幕に目星が付いていたとは。しかし、読み進めば、殺害された店員、店長の素行や、ナンペイを狙う暴力団に絡み、事件の背景が膨らむばかりで、真相は闇の中に…

『豊田商事会長殺害事件』。殺害直後の被害者の映像がテレビで放映されるなど、衝撃的な事件だった。犯人逮捕で決着したかに見えた事件の闇は深い。豊田商事に関わっていた暴力団、政治家の存在と豊田商事の残党による新たな詐欺。実行犯を操っていた黒幕の正体は…

『ライブドア「懐刀」怪死事件』。現代の錬金術とも言うべき手口で莫大な資金を集めた企業の背後にはやはり暴力団の影が…

『神戸児童連続殺傷事件』。猟奇的残虐な殺人事件の犯人が14歳の中学生だったという衝撃。14歳という年齢に加え、精神鑑定という鑑定者の匙加減でどちらにも転び得る非科学的な手法により加害者が守られるという理不尽さ。その犯人が少年院を退院し、我々が彼の姿を知らぬままに、大手を振って日常生活を送っているという恐怖。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2017年8月16日
読了日 : 2017年8月16日
本棚登録日 : 2017年8月16日

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