新装版 日本の黒い霧 (上) (文春文庫) (文春文庫 ま 1-97)

著者 :
  • 文藝春秋 (2004年12月7日発売)
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松本清張『新装版 日本の黒い霧 (上)』文春文庫。

松本清張のノンフィクション作品集。

年末にNHKスペシャルで2夜に亘り『未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件』を放送していたが、なかなか興味深い内容だった。

戦後の日本で起きた数々の不可解な事件の背後に見え隠れする不気味な米国の影。昔も今も変わらない米国による日本支配の構図。

米国の支配も去ることながら、今も昔も日本政府や日本企業も相変わらず不正に手を染めているのには幻滅する。昨年一番驚いたのは自民党政権がカルト団体の旧統一教会と長年に亘り蜜月を築いていたことだ。

そして、未だに米国の呪縛から逃れられぬ日本は、米国の希望に沿った形で復興予算までも防衛費という名の軍事費に投入し、さらには増税や社会保障費の減額まで実行しようというのだから驚くばかりだ。度重なる失策で挽回策が無くなった日本政府が国民を完全に無視して、米国の庇護により何とか生き延びようとしているかのようだ。

『下山国鉄総裁忙殺論』。昭和24年に起きた国鉄総裁の死亡事件。自殺なのか他殺なのか。国鉄の人員整理を巡り、見え隠れするGHQの影は帝銀事件にも通じる。この事件の謎については、柴田哲孝の『下山事件 暗殺者たちの夏』『下山事件完全版 ―最後の証言』、矢田喜美雄の『謀殺 下山事件 日本の熱い日々』などにも描かれている。

『「もく星」号遭難事件』。昭和27年に日航機が三原山に衝突し、遭難する。松本清張は事件の背後で隠蔽工作を図る米軍の姿に迫る。

『二大疑獄事件』。昭和電工事件と造船疑獄事件。事件の背後には米国やGHQの影がちらつく。国民から徴集した税金を不正に使用する悪者の姿は昔も今も変わらない。

『白鳥事件』。昭和27年、札幌で発生した警察官の射殺事件。ここにも被害者との関係の中に米国の影がちらつく。

『ラストヴォロフ事件』。昭和29年に起きたソ連元代表部二等書記官の失踪事件。半年以上が過ぎ、失踪したロシア人は米国に姿を見せる。そして、この亡命には日本人官吏が多数関連していたのだ。明かされるソ連と米国のスパイ天国日本の実態。

『革命を売る男・伊藤律』。ゾルゲ事件を暴く切っ掛けを作った伊藤律のスパイ活動。仲間たちを売り渡し、保身に務めた男も権力に踊らされていただけだった。

本体価格750円
★★★★★

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2023年1月1日
読了日 : 2023年1月1日
本棚登録日 : 2022年12月31日

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